御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?


「琳凰様、高沢様をお連れしました」


少し大きな声で榎田さんが言うと、


ガチャ


顔色の良い氷上くんが顔を出した。


「いいんちょー、入って」


「や、あの、これ届けに来ただけだから。私、帰るね」

「・・・せっかく来てくれたんだから、ゆっくりして行ってよ」


ちょっとムスッとした氷上くんにノートを差し出した手首を掴まれ中に引かれる。


わっ、えぇっ


渡したらすぐ帰るつもりだったのにっ。


「お茶をお持ちしますね」


榎田さんは微笑みながらそう言うと、すぐ立ち去ってしまった。


ガチャンと背中でドアが閉まり、広い部屋に二人きりになる。


大きな窓に、部屋の奥にはキングサイズのベッド。手前には大きなソファとテーブルが置かれていて何も置かれていない無駄なスペースがいっぱい。


かくれんぼとか出来そうにないな。


そんなことを思っていると、


「いいんちょー、座って」


氷上くんにソファまで連れて行かれ、腕を離された。


人一人分空けてすぐ隣に座った氷上くん。


・・・ちょっと近くない?かな?

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