御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?
第四話 これ以上は、危険です
私も氷上くんも藤堂さんを見て、一時停止みたいにその場で固まる。
「桃香・・・」
氷上くんは藤堂さんの名前を小さく呟いた。
その声で我に帰った私は、勢いよく立ち上がった。
「ここんにちは!あのっ、私、忘れ物を届けに来て勉強教えてただけなのですぐ帰ります!」
藤堂さんに向かって早口でそう告げると、床に置いていた自分のバッグを掴み上げて藤堂さんが立っている扉の方へ急いだ。
「いいんちょう!」
少し焦った声で呼ばれて、藤堂さんの手前で足を止め振り返った。
「・・・・・・これ、ありがとう」
氷上くんはノートを片手で持ち上げてそう言った。
「あ、うんっ。・・・明日から、ちゃんと授業出てください、ね」
少し複雑そうな表情を浮かべる氷上くんにそう言って、藤堂さんの方に向き直った。
「すみません、お邪魔しましたっ」
嵐のように目の前に来た私に、ちょっと圧倒されたような顔をしている藤堂さん。そんな彼女にぺこりと頭を下げて部屋を出た。