御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?
そう返すと桃香が急に黙り、止まっている視線を追うと、いいんちょーと食べたケーキの皿やコップが乗ったワゴンを見ていた。
「ケーキ、榎田が出してくれたんだ。桃香も食べる?」
「ううん、大丈夫。・・・・・・あのね、ここ、教えてくれる?」
桃香はいつものように笑って、教科書とノートを開いた。俺もいつものようにシャーペンを握り教えていく。
中学生の頃から変わらない、桃香と俺の関係。
中1になったある日、家にやって来た藤堂ホールディングスの会長である桃香の父親と桃香。
その時にお互いが婚約者であることを告げられた。
桃香は当時小学6年生。小さい頃から社交の場で会うとよく遊んでいて、妹のような存在だった。
だから、婚約者と言われてもお互いあまりピンと来ていなかったと思う。
当時も恋愛なんてしたことなかったし、桃香のことが嫌いなわけではなかったから、将来結婚しても別にいいかと思っていた。
それが、この家で生まれた俺がやるべきことなんだって。