御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?
「琳凰くん?」
「え?あ、ごめんっ」
やばい、ぼーっとしてた。
桃香が不思議そうに俺の顔を覗き込んでいた。
「やっぱりどこか悪いの?」
「いや、大丈夫。ちょっとぼーっとしてただけ。ごめんな」
「そう?あ、今日ね、お父様がお夕食一緒にどうかって」
「あぁ、ぜひ。久しぶりだな」
桃香に勉強を教え終わって、迎えの車で藤堂家へ移動した。
桃香の母親は今海外に行っているらしく、今回は桃香の父親と桃香と3人で食卓を囲んだ。
小さい頃からたまにこうやって食事をしてきたから、とくに緊張することもない。
食事が済み、食後のフルーツが運ばれて来たタイミングで桃香がお手洗いへと席を外した。
「琳凰くん。桃香と仲良くやってくれているようで安心したよ」
桃香の父、史彦(ふみひこ)がコーヒーを飲みながら言った。