御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?


「のんちゃん〜〜っ。やばいよやばいよ」

「デガワか」

「ほんとにやばいの!どうしようぅ〜」

「ま、落ち着け。死にはしないから。で、どうした?」


2日前、保健室であったことをのんちゃんに話した。


「あぁークソぅ。なんで私はその場にいなかったんだ。その時の氷上の顔を見たかった!悔やまれる〜っ」

「どうしよう、のんちゃん。氷上くんに合わせる顔がないよ」

「大丈夫だろ。普通にお礼言えばいいんじゃん?熱あったんだから、正常じゃなかったってことで」

「・・・・・・あ。なるほど。・・・熱のせい、か。それいい!」


我ながら単純だ。


さっきまで忙しかった頭と心が一気に落ち着いた。


手を掴んで引き止めたのは高熱のせい。


そう。そうだ。熱があったから。


正常じゃなかったんだ、私は。


よし、これでいこう。


そう意気込んだものの、結局氷上くんのところに自分から行く勇気は出ず、昼休みを迎えてしまった。

< 64 / 165 >

この作品をシェア

pagetop