御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?
「のんちゃん〜〜っ。やばいよやばいよ」
「デガワか」
「ほんとにやばいの!どうしようぅ〜」
「ま、落ち着け。死にはしないから。で、どうした?」
2日前、保健室であったことをのんちゃんに話した。
「あぁークソぅ。なんで私はその場にいなかったんだ。その時の氷上の顔を見たかった!悔やまれる〜っ」
「どうしよう、のんちゃん。氷上くんに合わせる顔がないよ」
「大丈夫だろ。普通にお礼言えばいいんじゃん?熱あったんだから、正常じゃなかったってことで」
「・・・・・・あ。なるほど。・・・熱のせい、か。それいい!」
我ながら単純だ。
さっきまで忙しかった頭と心が一気に落ち着いた。
手を掴んで引き止めたのは高熱のせい。
そう。そうだ。熱があったから。
正常じゃなかったんだ、私は。
よし、これでいこう。
そう意気込んだものの、結局氷上くんのところに自分から行く勇気は出ず、昼休みを迎えてしまった。