御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?


・・・・・・氷上くんだ。


長い脚の片膝を立てて、腕を目元に乗せて寝ている・・・?


どこで何をしていても絵になるな。


薔薇に囲まれて昼寝してるなんて、リアル王子様だよ、ほんと。


私は思わず立ち止まった。


右足が前に出て後ろに下がってと、傍から見れば不審でしかない動きを数回繰り返して、グッと拳を握りしめる。


・・・・・・お礼言わないとね。


迷ってる場合じゃない。今がチャンスだ。


気まずくない。大丈夫。あの時は熱があったから、なんかおかしかっただけ。


・・・・・・・・・よし。



寝ている氷上くんに近づくと、足音と人の気配を感じたのか氷上くんが目元の腕をずらし目を開けてこっちを見た。


「いいんちょー・・・?」

「あ、うん、ごめん。起こしちゃった?」

「・・・いや、寝てはなかったから」


そう言って氷上くんは身体を起こしベンチに座り直した。

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