御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?


「ここ、座れば?」

「・・・・・・うん」


氷上くんから見てベンチの右側を空けてくれて、私はそこに腰を下ろした。


「あのっ、このあいだはありがとう。お水までもらっちゃって・・・・・・すごく助かりました」

「ああ・・・。もう大丈夫なの?」

「うん、もう全然っ。で・・・・・・その、熱でほとんど覚えてないんだけど、なんか私、色々と迷惑かけちゃったみたいで、ごめん」


なるべく平静を装うけど、やっぱり思い出してしまって顔が勝手に熱くなってくる。


「・・・・・・。覚えてない?・・・なにも?」

「え・・・・・・あー・・・、ベッドに運んでもらったことは・・・覚えてる。ごめんね、重かったよね?」

「いや、全然。その先は?」


っ、


その先は、はっきり覚えてますとも。


顔から湯気が出そうだからやめて欲しい。


もはや、黒歴史だから。

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