御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?
「もうやめよう。・・・・・・こういうの、やっぱり良くないよ」
わたしがそう言って止まると、氷上くんも足を止めた。
たぶん私を見下ろしているだろうけど、私は氷上くんの顔を見ることができない。
ワルツだけが小さく流れたまま。
「藤堂さんが、悲しむと思う。好きな人が・・・他の誰かと踊っていたら、やっぱり悲しいよ」
「・・・・・・」
氷上くんは何も言葉を発さない。
わかってくれたのかな。
そう思ってゆっくりと氷上くんを見上げると、目の前の綺麗な顔が苦しそうに歪んでいた。