御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?
加瀬くんが来てくれて、助かった。
あのまま氷上くんと二人きりだったら、私はどうしてただろう・・・
「高沢」
薔薇園を出てすぐ、加瀬くんが立ち止まった。
「ん?」
「大丈夫か?氷上に、何かされた?」
「ううん。何もされてないよ」
心の中も頭の中もまだぐちゃぐちゃだけど、できるだけ明るく返した。
「・・・・・・。一緒に踊ってたの、見えたんだ」
「・・・あ、ああ!あれは、私が氷上くんに頼んで、ちょっと教えてもらってたの。私、踊るの下手だからさ、はは」
「それなら、俺に言えばよかったのに。いくらでも練習付き合うし」
「そ、そう?なんか、本番で踊ってもらうのに、加瀬くんに迷惑かけられないなーと思って・・・。でも、加瀬くんはどうして薔薇園に?」
うまく誤魔化せてるかな。
びっくりするくらいツラツラと言い訳できるもんだ。