御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?


『氷上様、婚約破棄されたんですって』

『やっぱりお噂は本当だったんですね』

『ついに私たちにもチャンスが来たのよ!』


私が氷上くんと薔薇園で踊った次の週から、あちらこちらで聞かれるようになったご令嬢たちの色めき立った声。


初めて聞いたときは、肝が冷えた。


少なからず自分が関わっているんじゃないかって。


何かの間違いだと思い直したけど、噂は途切れることなく、どうやら本当のようだった。


なにより、初めてその噂を聞いた日、登校してきた氷上くんの頬が少し腫れていて、何かあったのは明白だった。




はあ・・・


氷上くんと藤堂さんの婚約がなくなったからって、何も変わらないのに。


きっとまた相応しい婚約者がすぐに現れるはず。


そう思うのに、頭と心は闘い続けていて決着がつきそうにない。



いっそのこと、加瀬くんの胸に飛び込んでしまえば・・・・・・


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