御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?
第七話 私の気持ちは
「氷上くん・・・」
いつもは綺麗なサラサラの黒髪はアップバングにきっちりとセットしてあって、普段の制服とは違う姿に色気を感じる。
やっぱり一般人とは違うオーラを放っている。
そこにいるだけで、周りがキラキラして見える。
整った顔は目を見開き固まったまま動かない。
私も見惚れている場合じゃない。
パッと目を逸らし、氷上くんの来た方とは逆方向へと歩き出す。
「いいんちょー?ちょっと待ってっ」
ドレスとは違い身軽な氷上くんにあっという間に捕まった。
掴まれた左腕からドクドクと自分の拍動を感じる。
「なんで逃げるの」
「っ、ごめん・・・」
「ドレス、似合ってるね。すごい綺麗だし可愛い」
っ、
イケメンスマイルでそんなことを簡単に言わないで欲しい。
氷上くんにはなんて事なくても、こっちは言われ慣れてないんだからっ。
「・・・ありがとう。あの、手、離してもらっていいかな。そろそろパートナーと合流しなきゃいけない時間だし」
そう言ったのに、全く離れる気配のない手。