初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
だから断りたいのだ。相手が『無力』でなければ受け入れていただろう。相手が『無力』だからこそ駄目なのだ。
「どうせ君のことだから、くだらないことで悩んでいるのはわかっている。世間体やらなんやらか? 言いたい奴には好きに言わせておけ」
そう言いながらも、王はイグナーツが好きに言うのを許していない。
イグナーツが何か言えば「却下」「断る」「不採用」「没」と否定の言葉を口にするのがゼセール王なのだ。
「そうだ。発想の転換をしよう」
王はパチンと指を鳴らしたつもりのようだが、かすった音しか出てこなかった。指もかさつく年代であるのを自覚してもらいたい。目の前の王だって四十も半ばに差し掛かろうとしている。
「先ほども言っただろう? 君の娘、エルシーにも母親は必要なのではないか? 君のような無骨な男が父親であればなおのこと」
イグナーツはひくっとこめかみを動かした。
「だからな。エルシーのために結婚してくれ」
「ぐぬぬっ……」
娘のエルシーには、やはり母親は必要なのだろうと思っていた。だが、それを埋めるかのように侍女たちがなにかと世話をしてくれるし、家庭教師も手配している。
「どうせ君のことだから、くだらないことで悩んでいるのはわかっている。世間体やらなんやらか? 言いたい奴には好きに言わせておけ」
そう言いながらも、王はイグナーツが好きに言うのを許していない。
イグナーツが何か言えば「却下」「断る」「不採用」「没」と否定の言葉を口にするのがゼセール王なのだ。
「そうだ。発想の転換をしよう」
王はパチンと指を鳴らしたつもりのようだが、かすった音しか出てこなかった。指もかさつく年代であるのを自覚してもらいたい。目の前の王だって四十も半ばに差し掛かろうとしている。
「先ほども言っただろう? 君の娘、エルシーにも母親は必要なのではないか? 君のような無骨な男が父親であればなおのこと」
イグナーツはひくっとこめかみを動かした。
「だからな。エルシーのために結婚してくれ」
「ぐぬぬっ……」
娘のエルシーには、やはり母親は必要なのだろうと思っていた。だが、それを埋めるかのように侍女たちがなにかと世話をしてくれるし、家庭教師も手配している。