初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
――カタッ。
隣の部屋から物音が聞こえたような気がした。一瞬、空耳かとも思ったが、一度気になってしまうともっと耳を澄ませてしまう。
――カタカタッ。
オネルヴァはうさぎのぬいぐるみを両腕に閉じ込めたまま、寝台からするりと降りた。少しだけひやっとした空気が肌に刺激を与える。
絨毯の上を引きずるようにしてそろりそろりと足を動かし、一度も触ったことのない扉に手をかけた。
この扉に鍵はかかっていない。
カチャリと音を立てて取っ手は動き、音もなく扉は開いた。
オネルヴァの部屋と同じように、室内は暗かった。誰かがいる気配はしない。
つまり、彼女に聞こえた物音は、この部屋から聞こえたものではないのだ。
少しだけ離れた先にある扉の隙間から、一筋の明かりが漏れ出していた。扉が開いているわけでもないのに、隙間を縫うようにして明かりがこちら側に侵入してきている。
あの扉はイグナーツの部屋へと続く扉。もう一度うさぎのぬいぐるみを力強く抱きしめ、扉へと近づく。すすっという自分の足音が異様に大きく聞こえた。
隣の部屋から物音が聞こえたような気がした。一瞬、空耳かとも思ったが、一度気になってしまうともっと耳を澄ませてしまう。
――カタカタッ。
オネルヴァはうさぎのぬいぐるみを両腕に閉じ込めたまま、寝台からするりと降りた。少しだけひやっとした空気が肌に刺激を与える。
絨毯の上を引きずるようにしてそろりそろりと足を動かし、一度も触ったことのない扉に手をかけた。
この扉に鍵はかかっていない。
カチャリと音を立てて取っ手は動き、音もなく扉は開いた。
オネルヴァの部屋と同じように、室内は暗かった。誰かがいる気配はしない。
つまり、彼女に聞こえた物音は、この部屋から聞こえたものではないのだ。
少しだけ離れた先にある扉の隙間から、一筋の明かりが漏れ出していた。扉が開いているわけでもないのに、隙間を縫うようにして明かりがこちら側に侵入してきている。
あの扉はイグナーツの部屋へと続く扉。もう一度うさぎのぬいぐるみを力強く抱きしめ、扉へと近づく。すすっという自分の足音が異様に大きく聞こえた。