初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
 また、ゼセール王国軍が行ったのは、革命への後押しだけではない。
 荒れていた王都テシェバの生活を立て直すために力を貸し、政策を打ち出した。それが軌道にのり、すべてをキシュアス王国の関係者に任せられると判断したところで、軍を引き上げた。
 その報告をゼセール王にしたところ、結婚の話である。
 キシュアス王国に数か月間滞在していたイグナーツであるが、元第二王女の話はさっぱりと聞こえてこなかった。まして、その第二王女が現国王の養女になったなど、寝耳に水である。
 情報をうまく操作されていたのか、隠されていたのか。
 とにかく、イグナーツたちのおかげでキシュアス王国も立ち直りの一歩を踏み出した。その功績をたたえ、キシュアス国内に滞在していた軍関係者は、長い休暇をもらえることになっている。イグナーツもその対象の一人であった。
 だが、沸いてきたような結婚の話。休暇中は、この結婚の準備などで忙殺されて終わるのだろう。
 やや気が重いまま、イグナーツは帰路につく。
 ゼセール王国の王都には、貴族たちの別邸が立ち並ぶ地区と、市民たちの住宅の並ぶ地区がある。王城を中心に扇形に広がる王都は、王城に近い場所ほど貴族たちが多く住んでいた。
 その一角に、イグナーツの別邸はあった。白い外壁の凹凸の少ない建物で、いかにも別邸とわかるような造りである。この場所には同じような建物が多い。他の建物と差別をしようと思うのであれば、屋根の色や窓枠の色を変えるくらいだろう。イグナーツの別邸は、緑色の屋根と緑色の窓枠が目立つ建物である。
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