初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
二度と、キシュアス王国にいたときのような、あんな生活には戻りたくない。今のキシュアス王国であれば大丈夫だろうとは思いつつも、幼い頃から植え付けられた気持ちは、どこか心を蝕んでいる。
アルヴィドと再会してほっと安心したところもあるが、彼が時折見せた冷たい眼差しに、身体の底は震えていた。ああやって、一国を背負うような責任ある立場となれば、人は変わってしまうのだろうか。
離宮にいたときのささやかな楽しみが、他の者に隠れてアルヴィドと会うことだった。
彼だけは、オネルヴァを一人の人間として扱ってくれた。だが、彼と会っていたのが他の者に知られると、厳しい折檻を受けたのも事実。
アルヴィドには会いたかったが、会いたくないという思いもあった。アルヴィドはその気持ちを知っていたのだろうか。
カップを戻すと、寝椅子に深く身体を沈めた。
目を閉じる。
だが、なぜかイグナーツの戸惑うような困った表情が、瞼の裏に張りついているように見えた。
夜会の時間が迫り、オネルヴァはまたドレスを着替える。
昼間はエルシーとお揃いの淡いラベンダー色のドレスであったが、夜会となれば人工的に魔力によって作られた灯りが煌々と輝く世界である。それに映えるようなドレスが望ましい。
昼間に着たドレスとは全く雰囲気の異なるミッドナイトブルーのドレスである。
何段にもレースが重ねられたディアード状のスカート部分には、花のコサージュがたっぷりと縫い付けられている。
派手ではないかとオネルヴァは心配していたが、淡い同系色の小さな花であるため、思っていたほどではなかった。
アルヴィドと再会してほっと安心したところもあるが、彼が時折見せた冷たい眼差しに、身体の底は震えていた。ああやって、一国を背負うような責任ある立場となれば、人は変わってしまうのだろうか。
離宮にいたときのささやかな楽しみが、他の者に隠れてアルヴィドと会うことだった。
彼だけは、オネルヴァを一人の人間として扱ってくれた。だが、彼と会っていたのが他の者に知られると、厳しい折檻を受けたのも事実。
アルヴィドには会いたかったが、会いたくないという思いもあった。アルヴィドはその気持ちを知っていたのだろうか。
カップを戻すと、寝椅子に深く身体を沈めた。
目を閉じる。
だが、なぜかイグナーツの戸惑うような困った表情が、瞼の裏に張りついているように見えた。
夜会の時間が迫り、オネルヴァはまたドレスを着替える。
昼間はエルシーとお揃いの淡いラベンダー色のドレスであったが、夜会となれば人工的に魔力によって作られた灯りが煌々と輝く世界である。それに映えるようなドレスが望ましい。
昼間に着たドレスとは全く雰囲気の異なるミッドナイトブルーのドレスである。
何段にもレースが重ねられたディアード状のスカート部分には、花のコサージュがたっぷりと縫い付けられている。
派手ではないかとオネルヴァは心配していたが、淡い同系色の小さな花であるため、思っていたほどではなかった。