初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
「アルヴィドお兄様……。このような時間に、一体どのようなご用件でしょうか」
 相手が彼であったため、ほっと安堵のため息をついた。
「俺と一緒に来てもらおう」
「ですが……。わたくしは捨てられた身。ここから出ることは許されておりません」
 いくら相手がアルヴィドであったとしても、それよりも上の人間がオネルヴァをここに閉じ込めているのだ。
 アルヴィドはその言葉が聞こえていなかったのか、ゆっくりとこちらに近づいてくる。彼が歩くたびにカチャリカチャリと金属音が響く。腰に下げられている剣が音を立てていた。
 こんな時間でこんな場所であるにもかかわらず、帯剣しているのが気になった。
「それを決めたのは前の国王だろう。その国王が亡くなった今、君の身は新しい国王が決める」
「新しい国王、ですか?」
 震える身体を誤魔化すかのように、オネルヴァはぎゅっと掛布を胸元まで手繰り寄せた。
「もしかして……、プリーニオお兄様が?」
「いや、俺の父、ラーデマケラス公爵」
 オネルヴァの目が大きく見開かれる。
「国王および王太子の首はとった。妃たちは修道院に送る」
「わたくしも……?」
 肩を震わせながらアルヴィドを見上げた。だが、頭の中は意外と冷静だった。
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