初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
「嬉しかったのです……」
その言葉に、イグナーツは眉をひそめた。
「エルシーに好きだと言われて、嬉しかったのです」
だから自然と涙が零れた。誰かに好きだと言われたことなど、記憶のある限り、初めてである。
「初めてでしたので……」
「そうか」
呆れてしまっただろうか。
オネルヴァは恐る恐る顔をあげた。彼は困ったように目尻を下げている。
ずきっと胸の奥が痛んだ。なぜ、胸が痛むのかもわからない。
「エルシーを受け入れてくれてありがとう。俺にとってもかけがえのない存在だ」
「わたくしのほうこそ、エルシーと出会える機会を作っていただき、ありがとうございます」
右手にあたたかくて柔らかいものが触れる。
「お母さま?」
エルシーが満面の笑みを浮かべている。
「ありがとう、エルシー」
エルシーはもう片方の手でイグナーツの手を握りしめた。
「エルシーは、こうやってお父さまとお母さまと手をつなぎたかったんです」
うふふと声をあげている。
イグナーツは呆れたように鼻で笑った。
「では、このまま食堂に向かおうか」
エルシーを真ん中にして、その両端にはイグナーツとオネルヴァ。端から見たら仲のよい親子に見えるだろう。むしろオネルヴァは、そう見えることを願っている。そして、そう思っている自身に、戸惑いを覚えた。
その言葉に、イグナーツは眉をひそめた。
「エルシーに好きだと言われて、嬉しかったのです」
だから自然と涙が零れた。誰かに好きだと言われたことなど、記憶のある限り、初めてである。
「初めてでしたので……」
「そうか」
呆れてしまっただろうか。
オネルヴァは恐る恐る顔をあげた。彼は困ったように目尻を下げている。
ずきっと胸の奥が痛んだ。なぜ、胸が痛むのかもわからない。
「エルシーを受け入れてくれてありがとう。俺にとってもかけがえのない存在だ」
「わたくしのほうこそ、エルシーと出会える機会を作っていただき、ありがとうございます」
右手にあたたかくて柔らかいものが触れる。
「お母さま?」
エルシーが満面の笑みを浮かべている。
「ありがとう、エルシー」
エルシーはもう片方の手でイグナーツの手を握りしめた。
「エルシーは、こうやってお父さまとお母さまと手をつなぎたかったんです」
うふふと声をあげている。
イグナーツは呆れたように鼻で笑った。
「では、このまま食堂に向かおうか」
エルシーを真ん中にして、その両端にはイグナーツとオネルヴァ。端から見たら仲のよい親子に見えるだろう。むしろオネルヴァは、そう見えることを願っている。そして、そう思っている自身に、戸惑いを覚えた。