初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
◇◆◇◆ ◇◆◇◆

 オネルヴァを屋敷に迎えてから、四日が経った。
 迎えた次の日に、結婚誓約書を議会に提出した。議会で承認されたのち、あの国王の手元に届く。提出してから三日経っても書類が突っ返されなかったため、それは不備なく受理されたのだろう。
 イグナーツは目の前にいるオネルヴァに顔を向けた。
 彼女はテーブルマナーをエルシーに教えているところである。
 エルシーも幼いなりにマナーが身についていると思っていたのは、親ばかであるイグナーツだけで、オネルヴァから見れば目に余るものがあったようだ。
 この数日の間で、エルシーが口元を汚す回数も減っている。苦手な食べ物も食べてみようという姿を見せる。
 オネルヴァがきてからたった数日であるのに、エルシーがぐっと成長をしている。
 イグナーツの長期休暇も、残すところあと十日程となった。
 休暇中であっても、彼はちょくちょくと王城に足を伸ばしている。それはイグナーツが北軍の将軍という地位についているせいだ。
 だが、それもそろそろ返上したいと思っている。
 これからは軍の裏方に徹し、できるだけエルシーと過ごす時間を確保したいと、そう思っていた。

< 50 / 246 >

この作品をシェア

pagetop