初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
その日の夕食の時間――。
イグナーツは文字通り目を点にしてしまった。
「なんだって?」
「お父さま。エルシーは人参を食べられるようになったのです」
エルシーは色の濃い野菜を苦手とする傾向があった。だから、人参も彼女にとっては苦手な野菜に分類されていたはずだ。
「お母さまが、人参ケーキを作ってくれました。とても、美味しいのです」
それはイグナーツにとっては初耳だった。思わず、眉間に皺を寄せる。
「人参、ケーキ? オネルヴァがか?」
「あ、はい。エルシーは野菜が苦手であると伺いましたので。厨房をお借りして、人参のケーキを作ってみました」
イグナーツは、彼女がそういった料理ができることを知らなかったし、なによりも肝心の人参ケーキを食べていない。それがなんとなく悔しい。
「俺の分は……」
心の中で悔しがっていたはずなのに、思わず声に出ていた。
「エルシーが、全部食べました。お父さまは、甘いものが苦手ですよね?」
にかっとエルシーが笑う。
イグナーツは文字通り目を点にしてしまった。
「なんだって?」
「お父さま。エルシーは人参を食べられるようになったのです」
エルシーは色の濃い野菜を苦手とする傾向があった。だから、人参も彼女にとっては苦手な野菜に分類されていたはずだ。
「お母さまが、人参ケーキを作ってくれました。とても、美味しいのです」
それはイグナーツにとっては初耳だった。思わず、眉間に皺を寄せる。
「人参、ケーキ? オネルヴァがか?」
「あ、はい。エルシーは野菜が苦手であると伺いましたので。厨房をお借りして、人参のケーキを作ってみました」
イグナーツは、彼女がそういった料理ができることを知らなかったし、なによりも肝心の人参ケーキを食べていない。それがなんとなく悔しい。
「俺の分は……」
心の中で悔しがっていたはずなのに、思わず声に出ていた。
「エルシーが、全部食べました。お父さまは、甘いものが苦手ですよね?」
にかっとエルシーが笑う。