初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
「悪いが、君に拒否権はない。これは王命だ。これに背けば、君を反逆罪として捕らえるからな」
まるで脅しのような言葉であるが、本当に脅しているのだろう。
「君が捕らえられたらどうなる? 君の娘……、いくつになったのかな?」
イグナーツ一人の問題であれば、反逆罪と言われようがこの縁談を断り、国外逃亡をはかっていたかもしれない。いや、実際にする気はないのだが、それだけ結婚をしたくないという意味だ。
だが、娘のことまで持ち出されてしまったら、間違いなく国外逃亡などできるわけもなく、反論する余地もない。
「六歳になりました」
「かわいい盛りだね。言葉も覚え、字を書き始め、よく喋る。無垢な子は、本当に癒される」
うっとりとしている王は、今では思春期真っ只中の一番下の娘を想っているようだ。最近、蛆虫を見るような視線を投げかけられると言ってぼやいていたのは、いつだったろうか。
「娘となれば、これから大変になるだろう?」
目の前の王が言うと、妙に説得力があるから不思議である。
「娘のためにも母親は必要なのではないか?」
娘を出されてしまったら、イグナーツはぐうの音も出ない。もちろん、反論などできるわけがないし、する気もない。
娘はかわいい。目の中にいれても痛くないほど、かわいい。壁の影に隠れて彼女の様子を覗き見していたら、執事に咎められてしまったほど、かわいい。
まるで脅しのような言葉であるが、本当に脅しているのだろう。
「君が捕らえられたらどうなる? 君の娘……、いくつになったのかな?」
イグナーツ一人の問題であれば、反逆罪と言われようがこの縁談を断り、国外逃亡をはかっていたかもしれない。いや、実際にする気はないのだが、それだけ結婚をしたくないという意味だ。
だが、娘のことまで持ち出されてしまったら、間違いなく国外逃亡などできるわけもなく、反論する余地もない。
「六歳になりました」
「かわいい盛りだね。言葉も覚え、字を書き始め、よく喋る。無垢な子は、本当に癒される」
うっとりとしている王は、今では思春期真っ只中の一番下の娘を想っているようだ。最近、蛆虫を見るような視線を投げかけられると言ってぼやいていたのは、いつだったろうか。
「娘となれば、これから大変になるだろう?」
目の前の王が言うと、妙に説得力があるから不思議である。
「娘のためにも母親は必要なのではないか?」
娘を出されてしまったら、イグナーツはぐうの音も出ない。もちろん、反論などできるわけがないし、する気もない。
娘はかわいい。目の中にいれても痛くないほど、かわいい。壁の影に隠れて彼女の様子を覗き見していたら、執事に咎められてしまったほど、かわいい。