きみと夜を越える
通知音がしてスマホを開くと、


『青蘭(せいらん)中学校同窓会』


というグループに招待されたとの通知が来ていた。


「えっ……」


懐かしいけれど


一番見たくなかった言葉を目に、


無意識のうちにと声が出てしまった。


無音の講義室に、私の声だけが響く。


焦って周囲を確認した私は


人がいなかったことに胸を撫で下ろしてから


再びスマホに視線を落とした。







同窓会か。


行くつもりはないけれど、


招待をしてもらった身が


すぐに退会するわけにも行かず、


しばらくしてから抜けることにした。


なんとなくだけど問い詰められると面倒だから。





小春に続いて私もあと数日で


20歳の誕生日を迎える。


そんな私も中学生の頃は20歳までに


人生を終えるつもりだったから


運がよかったなと思う。


なんて、今だから言えることだけど。


「お疲れー」


肩にトートバッグをかけて


艶のある茶色の髪をなびかせながら


声を掛けてきたのは


友人の福岡奏音(ふくおか かのん)。


奏音とは共に同じ大学の文学部に通う同級生で、


入学式の日におどおどしていた私に


優しく声をかけてくれたのが奏音だった。


「お疲れ」と私が返すと、


奏音は微笑んで隣の席に腰を掛けた。


「ねぇ、綾は同窓会行く?」


それに、


どこも同窓会の話が出始める頃なんだ


と思った。


「ううん、行くつもりはないかな」


「そうなんだ」


「どうかした?」


「お誘い来たんだけど、


どうしようかなって思って」


「そっか」


「ほら、みんなに会いたいわけじゃ


ないじゃん?」


「だね」


別に、個別に会いたい人はいないけど、


その場に合わせておくことにした。


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