きみと夜を越える
「寺島さんのおかげで助かったよ」


翌日の美化委員の集まりに行くと


同じクラスの平川遥輝(ひらかわ はるき)に


声を掛けられた。


クラスごとの座席指定があったから


平川くんは私の隣に座った。


確かもう一人のクラス委員は平川くんだったっけ。


「困ってたんだ、今日は2人揃わないと罰があってさ」


「そっか」


「ごめん、せっかくの放課後を」


それには無意識で首を横に振った。


それから、「ありがとう」と水分を多く含んだ目で言う


平川くんに吸い込まれそうになって、私は俯いた。


「今日集まってもらったのは


朝と放課後の掃除実施率が低いからです」


突然、委員長は眼鏡をクイと上げて


鋭い目で周囲を見渡した。


平川くん曰く、美化委員には朝と放課後の2回、


校内清掃があるらしい。


けれど、3分の1も行われていないのが現状だとか。


そして、山﨑さんもしていない側。


「明日の朝からは出席を取り、不参加の場合は


然るべき対応を取らせていただきます」


それには、大袈裟だな、と思ったけど


部外者の私は黙っておいた。


私は今回限りで続けるつもりはないんだし、と。


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