攻略対象者に転生しましたが推しの親友枠におさまったので、彼の初恋を見守ることにします!
第7話
「えーっ、ビル、あんた貴族に知り合い居たの!」
「まぁな、すげー久しぶりだけど、チビのこいつを随分可愛がってやってたんだ」
女は明らかに、背の高い美形のオスカーの目を気にして、声が高くなっているのに。
それに気付かないビルのアホはご機嫌だ。
何が可愛がってやってた?
そうか、殴ることを相撲用語で、『可愛がり』って言うパターンもあるもんな?
相撲……その言葉の記憶がいつのものなのか、グレンジャーは意識もせずにいた。
そして続いて。
女の前でえぇかっこすんなや……
えぇわ、一発やったるからな!
今度はこっちが可愛がったる!
あの頃の屈辱と痛みを、忘れたことはない。
グレンジャーの瞳が赤く光り出したのに気付いたオスカーが、彼の胸の前に腕を伸ばしてきた。
そして、とても小さな声で言った。
「止めろ、ここで騒ぎを起こすな。
最悪、退学になる」
「……」
何の返事をしないグレンジャーにキレたように、ビルが大声を出す。
「何とか言えよ、ポンコツ万引き野郎が!
お前のど下手糞な万引きの腕は、あれから養子先のおっさんに磨いて貰ったのかよ」
「……」
何で止める?
こいつは親父殿のことまで!