攻略対象者に転生しましたが推しの親友枠におさまったので、彼の初恋を見守ることにします!
 誰のこともそれ程好きじゃないんだろう、とは思っていたが、また誰のことも嫌っていないような。
 どこか自分達とは違う、まるで年齢の離れた大人みたいな奴だ、と思っていた。


 それに、お前には出来る、と言われても。
 人の精神をいじる魔法なんて、親父殿から教えられていない。
 こいつは何を根拠に、自信たっぷりに言うんだ?




 一定の距離を空けて、ビルと女が3人の後ろを付いてくる。
 逃げ出せば、直ぐに追い付く距離だと思っているし。
 もし、今日逃げられても、後日学苑まで行けばいい、と思ってる馬鹿だ。

 簡単には部外者は学苑内には侵入出来ないのに、こっちを舐めているのだ。
 グレンジャーが返事をしないのは怯えているから。
 オスカーが金を払う、と言うのは殴られたくないから。
 カールなんて、見るからに震えているし。


 ビルはうまく金づるを見つけた、と思ってる。
 今回だけにするつもりなんかない。
 女とふたりで、今夜の楽しい予定で頭がいっぱいの馬鹿だ。



「カール、人目がつかない場所を教えてくれたら、帰れるようにする」

 
 オスカーが後ろのふたりに聞こえないようにカールに言ったその声は。
 さっき、ビルに脅されるまま金を出そうとした同一人物とは思えない……
 年上の男に恐喝されて、小さくなっている中学1年生とは思えない落ち着きぶりだった。
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