攻略対象者に転生しましたが推しの親友枠におさまったので、彼の初恋を見守ることにします!
「相変わらず、気持ち悪い目をしてんじゃねーか。
 あん時より、ますます赤くなってるな?
 お前さぁ、本当に人間かよ?
 バケモンじゃねーの?」

「……」

「こっちのガキは紫かよ。
 変な目の色同士、気が合う、ってか」

「そぉ? 赤も、紫も格好いいよぉ」

 黙っていればいいのに、女が余計なことを言って、ビルから頬を平手打ちされた。
 そこにさっきはキスしてたのに……狭い馬車の中で勘弁してくれ。
 何も言わないオスカーの膝の上の拳が固く握られたのが、隣に居たグレンジャーには分かった。
 目の前で女が殴られたことに怒っているんだ……


 馬車は繁華街を抜けて、王立植物園や博物館がある文化地区に入っていく。
 涙を見せたら、もっと殴られてしまうのだろうか。
 泣くのを我慢している女が鼻をぐずぐずさせていて、車内は変な雰囲気だった。
 外を眺めていたビルが落ち着かないように、そわそわし出した。
 このエリアには来たことがないのだろう。


「おい、お前、どこまで行くんだ?」

「博物館の裏に、僕のお祖母ちゃんが住んでて。
 僕が頼んだら、いくらでも出してくれるから」

「は、孫に甘いババアか。
 いいな、お前なかなか気が利くな?
 使えるガキは俺は好きだぜ?」


< 23 / 97 >

この作品をシェア

pagetop