攻略対象者に転生しましたが推しの親友枠におさまったので、彼の初恋を見守ることにします!

第9話

 人も含めて、生き物に向かって撃つのは初めてだった。
 あの日、シガレットケースを撃ち倒したように。
 決してレンガを撃ち砕いたようにしてはならない。
 グレンジャーはビルの右膝を狙った。

 この足に何度蹴られたか。
 通りすがりに尻を蹴られたこともある。
 子分にグレンジャーを押さえつけさせて、跳び蹴りされたことも。
 こいつの鬱憤ばらしに蹴られたのは、いつも年少の少年達だった。


 貫通はさせていない。
 当てただけだ。 
 それでも充分で、1発目はかすっただけなのに、ビルはパニックになって、女を置いて逃げようとして。

 右の膝裏をグレンジャーに撃たれた。
 女は腰を抜かしていた。


 うつ伏せで倒れたビルを後回しにすることにして、オスカーは先に動けない女に記憶の書き換えをしろ、と言ってきた。

 この記憶と、ついでにビルについても忘れるようにしてくれと頼まれた。
 グレンジャーがその通りに念じると、女は先程の御者と同様にグレンジャーの顔を見て、頭を振り……倒れた。
 
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