攻略対象者に転生しましたが推しの親友枠におさまったので、彼の初恋を見守ることにします!
 グレンジャーは隣で、気長に自分を見守る養父を、横目で睨んだ。


 ◇◇◇


 流行り病で、両親が立て続けに亡くなった。
 貧しい母国で仕事を失った父に連れられて、この国へ来た。
 母国に比べて、移住したこの国は豊かだ。
 気温も割りと一定していて、茹だるような夏の暑さも、凍えるような冬の寒さもない……神様から愛された国。


 それでも、移民の両親は働いて働いて。
 やがて父は病に倒れて、看病した母も同じ病に倒れた。
 この国が移民政策において高らかに謳う『皆、平等』はクソだった。



 何故か、15歳以下の子供は罹患しない、癖のある流行り病だ。
 病院でも移民は後回しにされた。
 貧しい彼等の家に、個人で開業している医師の訪問診療等来るはずもなく。
 平民でも行ける都立病院だけが頼みだったのに。


 そして、両親は共に亡くなり。
 グレンジャーは天涯孤独の身になった。
 母が病に倒れたことによって、治る迄ならと面倒をみてくれていた同郷の婦人も、このまま引き取るのは無理だと役所に訴えて。


 この国に寄る辺のない幼い少年は孤児院行となり。
 ぎちぎちに毎日が管理されていた孤児院の月一回の。
 自由行動が許された日。
 出会いは雑貨店だった。
< 8 / 97 >

この作品をシェア

pagetop