攻略対象者に転生しましたが推しの親友枠におさまったので、彼の初恋を見守ることにします!
 養父のカーネルは漂う匂いから周囲に酒が撒かれたと知り、先ずは酒精を蒸発させて、暖炉を破壊した。
 グレンジャーがしたのは、床に落ちた薪の火を消しただけだった。



 ……殿下、荒事は俺達ふたりに任せてくれて、自分は大事な恋人の介抱だけしていればいいのに。


 肉弾戦やないかい、とグレンジャーは思い。
 オスカーのロザリンドに対する想いの深さに。
 こんな修羅場なのに、ほっこりしてしまった。


 抵抗する体力も気力も失った男から離れたオスカーも、フラフラの状態だったが、ハイハイしながらロザリンドの側に行き。
 彼女を抱き締めて、キスをしていた。


 ようやく意識を取り戻したロザリンドが、殴られたオスカーの頬に触れて。
 話しているのが聞こえた。


「ミカミさん……ありがとう。
 わたしはホナミ……あのね。
 黒髪……」


 盗み聞きするつもりはないが、そこから全部聞き取れた。



 だって、この世界では魔法使いは万能だから。
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