攻略対象者に転生しましたが推しの親友枠におさまったので、彼の初恋を見守ることにします!
「でも、それもまた、オスカーに断られそうだけどな」
今の学苑でのオスカーの呼び名は『殿下』だ。
皆は親からオスカーが臣下に下る、と聞いているのに。
『殿下』と呼ばれたオスカーが嫌な顔をするのが面白くて、わざとそう呼ぶのだ。
普段、感情を見せない男は、こう言うことでからかわれる。
「俺のさ、卒業後の進路のことなんだけど……」
半年先の卒業後の話を聞いてもらいたい、とグレンジャーは思っていた。
「俺さ……魔法省に入らないと、やっぱりまずいかな?」
「何だ? 他に何かやりたいことが見つかったか?」
ピッパと組んで学生シンポジウムで発表した研究が高評価されて、彼女と揃って入省確実と言われているグレンジャーだったが、ここに来て、進路について悩み始めていた。
「親父殿が教えてくれた唯一の攻撃魔法、あれを役立てたい。
この国には、まだまだ整備されていない道や場所が沢山あって……
各地の交通整備、水路整備したら、もっと農作物の国内生産量も上がって、流通も容易になる、と思うんだ。
俺はこの国に来て、移民差別もされたけど、助けて貰えたことの方が多くて、恩返しと言うか」