Far away ~いつまでも、君を・・・~
打ち合わせは和気藹々と進み、時間は瞬く間に過ぎた。
「じゃ、次回は衣装やお料理、お花や写真と言った具体的な内容を詰めて行くことになります。お渡しした資料に目を通してもらって、新郎様とも、よくご相談なさって来て下さい。」
とビジネスバージョンで締めた彩は
「でも、なにかあったらいつでもLINEでも電話でもちょうだい。時間が合えば、プライベ-トでも全然相談に乗るし。」
と友だち口調で付け足した。
「ありがとう。この間の時も思ったけど、彩は頼りになるプランナ-さんだね。」
「部活の時も頼りになったでしょ?」
「それはもちろん。」
「だから、私は頼りになる女・・・って胸張りたいけど、たぶん今は制服効果だね、きっと。あ、そう言えば、部活も袴だったね。」
そう言って笑い合った後、彩は遥を出口まで見送る。
「この時間に彩と一緒にいるのに、お昼食べないで別れるのは、ちょっと不思議な感じだね。」
「そうだね。でもまた近々会おうよ。」
「うん、そうしよう。じゃ、今日はありがとう。午後もお仕事頑張ってね。」
「ありがとう。ではお気をつけて。」
最後はビジネスモードに戻って、うやうやしく一礼して、笑顔で遥を見送った彩だったが、その後ろ姿が見えなくなると、急激に表情を曇らせた。
本当はいけないのだろうが、親友との雑談交じりの、ちょっと経験のない楽しい雰囲気の打ち合わせが終わり、昼食休憩を挟んで、午後一で迎える新規問い合わせ来場者が、彩を憂鬱にしていた。
このカップルからの見学希望は、メ-ルで入っていた。そのメールを開いたプランナ-が基本的に対応するのが、ホテルのルールになっているのだが、果たしてそのカップルの男性の名前を見た時に、彩の呼吸は一瞬止まった。
(ウソでしょ・・・。)
この地域だけで、競合と言われるホテルや結婚式場は、いくつあるだろう。そしてこのホテルのプランナ-は自分一人ではない、なのに、こんな偶然が・・・。
(同姓同名ってこともあるし・・・。)
そう思いながら、彩は返信する。当然自分のフルネ-ムを入れて。それを見て、もし「彼」なら、断って来るかもしれないと思っていた。しかし、カップルからは正式に来場希望の返事があり、よほど担当を替わってもらおうかとも思ったが、正当な理由もなく、それも言い出しかねた。
(私の名前を見ても、来場されるってことは、きっと別人なんだろう。)
そう思いながら、彼らを迎えた瞬間、彩の淡い希望は打ち砕かれた。それでも内心の動揺を懸命に抑えながら
「本日は、ご来場ありがとうございました。」
と何事もなかったかのように、頭を下げられたのは、事前にある程度の覚悟が出来ていたことと、彩がやはりプロになっていた証拠だったろう。
「じゃ、次回は衣装やお料理、お花や写真と言った具体的な内容を詰めて行くことになります。お渡しした資料に目を通してもらって、新郎様とも、よくご相談なさって来て下さい。」
とビジネスバージョンで締めた彩は
「でも、なにかあったらいつでもLINEでも電話でもちょうだい。時間が合えば、プライベ-トでも全然相談に乗るし。」
と友だち口調で付け足した。
「ありがとう。この間の時も思ったけど、彩は頼りになるプランナ-さんだね。」
「部活の時も頼りになったでしょ?」
「それはもちろん。」
「だから、私は頼りになる女・・・って胸張りたいけど、たぶん今は制服効果だね、きっと。あ、そう言えば、部活も袴だったね。」
そう言って笑い合った後、彩は遥を出口まで見送る。
「この時間に彩と一緒にいるのに、お昼食べないで別れるのは、ちょっと不思議な感じだね。」
「そうだね。でもまた近々会おうよ。」
「うん、そうしよう。じゃ、今日はありがとう。午後もお仕事頑張ってね。」
「ありがとう。ではお気をつけて。」
最後はビジネスモードに戻って、うやうやしく一礼して、笑顔で遥を見送った彩だったが、その後ろ姿が見えなくなると、急激に表情を曇らせた。
本当はいけないのだろうが、親友との雑談交じりの、ちょっと経験のない楽しい雰囲気の打ち合わせが終わり、昼食休憩を挟んで、午後一で迎える新規問い合わせ来場者が、彩を憂鬱にしていた。
このカップルからの見学希望は、メ-ルで入っていた。そのメールを開いたプランナ-が基本的に対応するのが、ホテルのルールになっているのだが、果たしてそのカップルの男性の名前を見た時に、彩の呼吸は一瞬止まった。
(ウソでしょ・・・。)
この地域だけで、競合と言われるホテルや結婚式場は、いくつあるだろう。そしてこのホテルのプランナ-は自分一人ではない、なのに、こんな偶然が・・・。
(同姓同名ってこともあるし・・・。)
そう思いながら、彩は返信する。当然自分のフルネ-ムを入れて。それを見て、もし「彼」なら、断って来るかもしれないと思っていた。しかし、カップルからは正式に来場希望の返事があり、よほど担当を替わってもらおうかとも思ったが、正当な理由もなく、それも言い出しかねた。
(私の名前を見ても、来場されるってことは、きっと別人なんだろう。)
そう思いながら、彼らを迎えた瞬間、彩の淡い希望は打ち砕かれた。それでも内心の動揺を懸命に抑えながら
「本日は、ご来場ありがとうございました。」
と何事もなかったかのように、頭を下げられたのは、事前にある程度の覚悟が出来ていたことと、彩がやはりプロになっていた証拠だったろう。