Far away ~いつまでも、君を・・・~
⑧
夏休みが終わり、新学期が始まり、すぐに定期試験、そして文化祭。尚輝が生徒たちと共に、慌ただしくも充実した時間を過ごしているうちに、厳しかった暑さは、やがて爽やかな秋の風に乗って去って行った。
そしてこの日、颯天高校弓道部は、秋の新人戦を迎えていた。入部するまで、弓を握るどころか、見たこともなかった13名の1年生が、1学期での基礎練習から夏合宿を経て、いよいよ対外試合デビュ-を果たす。
この日、生徒たちは学校に集合してから、揃って会場入りする。顧問として、彼らを引率する為、尚輝は身支度を整えていた。
「尚輝、出来たよ。」
そこに声を掛けて来たのは、恋人の京香。昨日のおうちデ-トの後、そのまま泊った彼女が、朝食を用意してくれた。
「ありがとう、今行くよ。」
そう答えた尚輝は、鏡に写った自分の顔を確認すると、洗面台を離れた。
食卓には、尚輝の好きな焼き魚に卵焼き、それに味噌汁にご飯という、和食の朝食が並べられていた。
「いただきます。」
就職を機に、1人暮らしを始めた尚輝。過去2年は慣れない家事を億劫がり、食事もついつい外食に頼ることが多かったが、6年間の1人暮らしを経て帰郷した京香は、料理はお手の物。こうして手料理を振舞ってもらう機会も増え、尚輝は心から感謝していた。
「京香の飯は本当に美味い。お陰で俺もこれで力が出るよ。」
朝から旺盛な食欲を示す尚輝に
「別に尚輝が試合に出るわけじゃないじゃん。」
と京香は笑う。
「バカ、応援するのもパワ-がいるんだ。」
大真面目な顔でそう言うと、尚輝は
「おかわり。」
京香にあっという間に空になった茶碗を差し出す。
「確かに、尚輝が手塩にかけて育てた生徒たちの大会だもんね。力入るのも無理ないし、せっかく早起きして作ったんだから、そうやってモリモリ食べてくれた方が、こっちも嬉しいけどね。」
そんなことを言いながら、京香は受け取った茶碗に、山盛りのご飯をよそって、尚輝に戻した。
やがて、充分な腹ごしらえをした尚輝は
「じゃ、行って来るよ。」
「いってらっしゃい、気を付けてね。」
京香に見送られて、部屋を出る。
(いってらっしゃいか・・・悪くねぇ。)
恋人の見送りを受け、尚輝は思わずニヤついていた。
そしてこの日、颯天高校弓道部は、秋の新人戦を迎えていた。入部するまで、弓を握るどころか、見たこともなかった13名の1年生が、1学期での基礎練習から夏合宿を経て、いよいよ対外試合デビュ-を果たす。
この日、生徒たちは学校に集合してから、揃って会場入りする。顧問として、彼らを引率する為、尚輝は身支度を整えていた。
「尚輝、出来たよ。」
そこに声を掛けて来たのは、恋人の京香。昨日のおうちデ-トの後、そのまま泊った彼女が、朝食を用意してくれた。
「ありがとう、今行くよ。」
そう答えた尚輝は、鏡に写った自分の顔を確認すると、洗面台を離れた。
食卓には、尚輝の好きな焼き魚に卵焼き、それに味噌汁にご飯という、和食の朝食が並べられていた。
「いただきます。」
就職を機に、1人暮らしを始めた尚輝。過去2年は慣れない家事を億劫がり、食事もついつい外食に頼ることが多かったが、6年間の1人暮らしを経て帰郷した京香は、料理はお手の物。こうして手料理を振舞ってもらう機会も増え、尚輝は心から感謝していた。
「京香の飯は本当に美味い。お陰で俺もこれで力が出るよ。」
朝から旺盛な食欲を示す尚輝に
「別に尚輝が試合に出るわけじゃないじゃん。」
と京香は笑う。
「バカ、応援するのもパワ-がいるんだ。」
大真面目な顔でそう言うと、尚輝は
「おかわり。」
京香にあっという間に空になった茶碗を差し出す。
「確かに、尚輝が手塩にかけて育てた生徒たちの大会だもんね。力入るのも無理ないし、せっかく早起きして作ったんだから、そうやってモリモリ食べてくれた方が、こっちも嬉しいけどね。」
そんなことを言いながら、京香は受け取った茶碗に、山盛りのご飯をよそって、尚輝に戻した。
やがて、充分な腹ごしらえをした尚輝は
「じゃ、行って来るよ。」
「いってらっしゃい、気を付けてね。」
京香に見送られて、部屋を出る。
(いってらっしゃいか・・・悪くねぇ。)
恋人の見送りを受け、尚輝は思わずニヤついていた。