Far away ~いつまでも、君を・・・~
故郷に帰り、久しぶりに母校に足を踏み入れ、懐かしい顔に出会い、そして思い出の場所で、弓を引く。そんな時間を過ごして、エネルギーをもらって戻って来た彩が、また慌ただしい日常を過ごしているうちに、アッと言う間にひと月半ほどが過ぎた。


ブライダル業界はトップシ-ズンと言える時期を迎えていた。そして今日、彩にとって大切な親友である遥と町田の挙式日であった。


(いい天気だ。)


空は雲1つない快晴。「晴れの日」の言葉通り、結婚式には晴天が似合う。7時半に出勤した彩は、この日の流れを確認。準備に漏れがないかの最終チェックをしながら、2人を待ち受ける。


そして8時半に、まずは新婦とその家族が登場。実家が遠く、また新郎が既に遠方に赴任してる為、新郎新婦は、家族ともどもベイサイドシティに前泊していた。


「おはようございます、お待ちしておりました。香田様、本日はおめでとうございます。」


家族も一緒なので、まずはプランナ-として、丁寧に挨拶の言葉とお祝いの言葉を述べたあと


「それでは、新婦様はこちらへ。ご家族の皆様は控室にご案内させていただきます。」


彩はスタッフに家族の案内を指示すると、自らは遥の先導をして歩き出した。


「朝ごはん、ちゃんと食べられた?」


2人になったので、友だちに戻って、彩は話し掛ける。


「うん。あんまり食欲なかったけど、なんとか。彩に当日は朝はしっかり食べるように言われてたから。」


「ならよかった。前にも話したけど、披露宴では、新郎新婦、特に新婦さんはなかなか食べる余裕がないからね。」


「そう言えば、昨日は素敵なお部屋をありがとう。お夕飯もおいしかった。」


「お夕飯はマチヒロの家族と食べたんでしょ?」


「うん。でもその後は、それぞれの家族で。お陰で、最後に家族水入らずで、ゆっくり過ごせたよ。」


「ご両親にお別れのご挨拶はしたの?」


「そのつもりでいたんだけど、お互い照れ臭いし、朝はなんだかんだと慌ただしくて。」


「そっか。でも話を聞くと、今はどこもそんな感じらしいよ。」


そんな会話を交わしながら、2人はブライズル-ムに到着。


「じゃ、お着替えとメイクはこちらになるから。もうすぐマチヒロが来るから、一回離れるけど、私は基本的には、今日はずっと遥の側にいるから、安心して。」


「うん、よろしくね。」


そう言った遥を力づけるように、彩は笑顔で頷いた。
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