Far away ~いつまでも、君を・・・~
「それでは、お時間です。」


彩が声を掛けると、遥の母親が、彼女のベールを下ろし、父親が彼女の腕を取る。いよいよ式の始まり。


「彩。」


不安そうな視線を向けてくる遥に


「大丈夫。さっきのリハ-サル通りにやれば。」


彩は力強く言う。その言葉にコクンと1つ頷いた遥は、前を向く。そして扉が開かれ、遥と父親がゆっくりと歩み出す。


大勢の拍手に迎えられた遥たちは、一礼してまたゆっくり一歩ずつ歩を進めて行くその後ろを、彩も歩む。参列者の中に、見知った顔がいくつもある。そんな彼らと目が合うと、一瞬気恥ずかしくなって、照れ笑いを浮かべてしまうが、すぐに表情を引き締める。


そして新婦と父親が新郎の前に到着し、プランナ-の彩はさりげなく位置を変える。花嫁が父親から新郎の手に引き渡され、2人がそっと見つめ合う姿を目の当たりにするのは、いつもながら微笑ましい気持ちになる。


祭壇の前に並んだ新郎新婦に、牧師が聖書を朗読し、そして神にお祈りを捧げる。そして誓いの言葉を述べ、その証として指輪を交換。見つめう2人はそっと口づけを交わす。


それを見届けた神父が2人が晴れて夫婦になったことを宣言。そして新郎新婦は結婚証明書にサインする。


何度見ても、厳かな気持ちになり、感動を覚えるその光景。ましてたった今、結ばれた2人は彩にとっては青春時代を共に過ごした大切な親友。


(遥、マチヒロ、おめでとう。)


思わず胸にこみ上げてくるものがあり、瞳が潤んで来るのを感じた彩は、懸命に自分を抑える。


全てのセレモニ-が終わり、バージンロ-ドを退場する2人を先導するのは、彩の役目。そして教会を出た新郎新婦を迎えたのは、フラワ-シャワ-。更にそのあとには、ゲストの女性陣がお待ちかねのブーケトス。


遥の投げたブーケを見事キャッチしたのは・・・宮田由理佳だった。


「もう、由理佳さんはちゃんと素敵なお相手がいるんだから、遠慮してくださいよ。」


「そうはいかないよ。私だって遥の幸せにあやかりたいもん。」


そんなやり取りを横目に見ながら、彩は次の準備に向かう。式は終わったが、もう1つのメインイベントの披露宴が控えている。彩が感慨に浸っている余裕はない。
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