Far away ~いつまでも、君を・・・~
披露宴に備え、一回控室に新郎新婦が戻ったのを見届け、彩は会場の最終チェックに走る。受付にはゲストが続々と到着している。当然顔見知りや友人もいて


「彩。」


と声も掛かるが、そちらにチラリと笑顔を送るのが精一杯。会場に入り、ホール責任者に準備状況を確認し、司会者とも最後の打ち合わせ。


「では、もう間もなくです。よろしくお願いします。」


そう告げると、彩は遥たちのもとへ戻って行く。


両親や挨拶に顔を出した友人たちも、既に会場に入った。式を終えて、ここに戻ってきた時は、表情も和らいでいた遥と町田だったが、披露宴が近付き、再び緊張した表情に戻っている。


「準備は万端。あと2人の入場を待つばかりだよ。」


そう声を掛ける。


「うん・・・。」


1つ頷いた遥に


「さぁ、行こう。」


あえてタメ口で告げると、彩はニッコリ微笑んだ。


「うん、よろしく。」


それに応えて、緊張を振り払うように、2人は立ち上がった。


会場に向かう間、言葉少ない2人に


「今日はありがとうね。」


と声を掛ける彩。


「えっ?」


突然お礼を言われて驚く遥に


「ウチを選んでくれたお陰で、こうしてずっと2人の側で、晴れの日を見守ることが出来る。名誉だし、心から嬉しいんだ。」


彩は心の底から、そう思っていた。


「俺たちも、廣瀬がずっとそばにいてくれて心強い。」


「そう思ってもらえるなら何より。」


そんなことを話しながら、3人は会場の扉の前に。


「扉が開いたら、ゆっくり前に進んで、中に入ったら、すぐに一礼。そして正面の高砂席まで。マチヒロ、遥は本当に歩きにくいから。緊張と気恥ずかしさで、つい早足になる新郎さんがいるんだけど、くれぐれもゆっくり歩いてね。」


注意を与える彩に


「わかった。」


町田は緊張の面持ちで頷く。


「それでは、新郎新婦のご入場です。皆様、盛大な拍手でお迎えください!」


会場から司会の声が聞こえて来る。そして扉がパッと開き、暗くなった会場からライトが2人を照らす。


「GO。」


普段の挙式なら絶対に使わない言葉で、彩は遥たちを促した。その彩の合図に、2人は歩を進める。


ゆっくりと一礼。そして万雷の拍手の中、遥と町田が進み出す。そしてその後ろから注意深く、彩も付き従って歩く。
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