Far away ~いつまでも、君を・・・~
「どういうつもりだ?」


「・・・。」


「俺に直接、何の申告もなしで、部活を欠席し続けるとは、主将としてあるまじき態度だとは思わないのか?」


「申し訳ありません。ずっと体調が悪くて。」


そう言って、頭を下げた千夏は


「もうすぐ、期末試験前の部活休止期間になりますから、それが終わるまで、このまま休ませて下さい。」


と尚輝に告げる。


「わかった。授業や試験に支障が出るようでは困るからな。その代わり、試験が終わったら、ちゃんと出て来いよ。」


「はい、わかりました。わがままを言って、申し訳ありません。」


そう言って、もう1度頭を下げると、千夏は校門に向かう。その後ろ姿を、尚輝は厳しい表情で見つめていた。


それから試験終了まで2週間ほど、千夏は普段より、やや元気がないようには見えたが、それでも授業にはキチンと出ていたし、試験も当たり前のように受けていた。


試験最終日、全ての試験が終わり、解放感から賑やかなクラスメイトたちの声が響く教室で、ひとり帰り支度をしていた千夏に


「千夏、友達が来てるよ。」


と声が掛かる。見れば、弓道部の仲間たちが心配そうな表情で、こちらを見ている。そんな彼女たちに、笑顔を送った千夏は


「じゃ、お先に。また明日ね。」


「うん、千夏、部活頑張ってね。」


「ありがとう。」


と周囲の友人たちと挨拶を交わすと、席を立った。


「迎えに来てくれたんだ、悪かったね。」


教室を出て、仲間達に声を掛ける千夏に


「千夏、大丈夫?」


美奈が尋ねる。休止期間が含まれてるとは言え、こんなに長く、千夏が部活を休むなんてことは、今までの彼女からは考えられない。仲間達が心配顔になるのも、無理はないのだが


「うん、心配かけてごめんね。でも今日から、またバリバリやるからよろしく。」


そんな友人たちの不安を吹き飛ばすように、千夏は言う。


「よかった。千夏がいないとやっぱり、私たちダメだからさ。」


「頼りにしてるよ、主将。」


千夏の言葉に、部員たちの表情もホッとしたように緩む。


「さ、行こう。」


仲間達に声を掛けて、彼女達の先頭を切って教室を出る千夏。


「うん、尚輝っちもきっとお待ちかねだよ。」


しかし、そう応じた友人の言葉を聞いた途端、その表情から、先程までの笑顔は消えていた。
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