Far away ~いつまでも、君を・・・~
「京香、冗談も休み休み言えよ。俺と葉山はいくつ齢が離れてると思ってるんだ?まして俺たちは教師と生徒。そんな漫画みたいな話が・・・。」


呆れ顔で言った尚輝だが


「私、少なくとも尚輝よりは女子高生の気持ちがわかるつもりなんだけど。」


京香に真面目な顔で言い返され、言葉を失う。


「あのくらいの年代の女の子にとって、7つや8つの齢上は、ちょうど大人の男性として憧れの対象になり易いんだよ。まして葉山さんにとって尚輝は、自分が熱中する競技の指導者で尊敬も出来る。私が言うのもなんだけど、ビジュアルだって悪くない。」


「・・・。」


「だいたい尚輝が、葉山さんに勝手に彩さんを重ね合わせて、熱心に入れ込んで指導するから、彼女を余計に勘違いさせた。」


「いや、ちょっと待ってくれよ。少なくとも俺は・・・。」


「そんなつもりはなかったことは私はわかってるよ、私はあなたの彼女なんだもん。でも尚輝にその気がなくても、あなたの言動から葉山さんが自分に好意を持ってるって受け取っても仕方ない面があると思ったから、私、冗談めかしてではあったけど、釘刺したこと、あったよね。」


恋人の言葉に、頷かざるを得ない尚輝。


「その上、どんな理由であれ、この前、葉山さんを抱きしめちゃったんでしょ?たぶんまだ、恋愛経験もほとんどなくて、ピュアな彼女がいよいよ尚輝に想いを募らせるのは、無理ないじゃない。」


「・・・。」


「要するに、尚輝は自分で全く意図しないうちに、葉山さんを落としちゃったのよ。」


「そ、それはまずいよ。」


京香の最後の言葉に、尚輝は俄然慌てだした。


「とりあえず、葉山と話をしないと。」


「えっ?」


「とにかく、彼女にそんな思いを抱いてはいないって、はっきり伝えないと。」


善は急げとばかりに立ち上がろうとする尚輝に


「もう彼女はわかってるよ。」


と言って、京香は難しい顔をする。


「昼間、尚輝と話して、自分の思いが完全な一方通行であることに葉山さんは気が付いた。だからショックを受けて、学校を飛び出して行ったんだよ。」


「そ、そっか・・・。だとしたら、これからどうしたらいいんだ?」


「・・・。」


縋るように尋ねてくる尚輝の顔を、京香も困惑の表情を浮かべて、見つめるだけだった。
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