Far away ~いつまでも、君を・・・~
結局、彩は2中に終わり、全く不本意な結果に終わってしまった。チ-ム全体でも、14本中と予選通過にわずか1中、及ばなかった。


(せめて、私があと1中出来ていれば・・・。)


彩は唇を噛み締めたが、もはやどうにもならなかった。


「彩、お疲れ。」


出迎えた遥の顔をチラッと見て


「全然集中出来なかった、これが実力なんだね」


そう漏らした彩は


「彩先輩、お疲れ様でした。どんまいです。」


そう声を掛けた尚輝の方には、振り向きもしないで、そのまま更衣室に入ってしまう。


(普段の力を全然発揮できていなかった。悔しいだろうな。)


親友の無念さがひしひしと伝わって来て、遥にはそれ以上の掛ける言葉が見つからなかった。


男子団体、個人も奮わず、わずかに由理佳が出場した女子個人戦のみが決勝に進出したが、上位選手の壁は厚く、颯天高弓道部の夏は、終わりを告げた。


1度、学校に戻り、総括の話をした児玉は


「これで3年生は、事実上の引退ということになる。宮田を中心に、今年のチ-ムをよく引っ張ってくれた。感謝している。これからは学生の本分である勉強に力を注いで、それぞれの道を進んで行って欲しい。3年間、お疲れ様でした。」


最後にこう、労いの言葉を述べる。それを聞いた3年生の多くの目に、涙が浮かんでいるのを見た彩は、胸をつかれた。


そして解散。お疲れ様会で、なんか食べに行こうと盛り上がっている3年生や同級生たちを尻目に、1人歩き出した彩に


「先輩!」


例によって声を掛けて、近寄ろうとする尚輝。だが


「二階くん。」


遥の声がする。


「今日は・・・1人にしてあげて。」


「遥先輩。」


「私も・・・今は彩に掛ける言葉が見つからないから。」


そう言った遥の顔を、少し見ていた尚輝は


「・・・わかりました。」


と頷いた。


(遥・・・ありがとう。)


その会話は、当然耳に届いている。親友の気遣いに、彩は素直に感謝していた。
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