Far away ～いつまでも、君を・・・～

「高校時代から、ずっと可愛い彼女がいるんだよ。それなのに、千夏ちゃんを勘違いさせて。OB･OG会にお願いして、あんな奴、顧問から解任してもらう。」


そう言って、真剣な表情で自分を見つめてくる彩に


「あ、あの・・・彼女いるのは初耳ですけど、尚輝っちもいい齢ですから、そうだとしても全然不思議じゃないですから。だから・・・。」


あまりの彩の剣幕に、いよいよ焦る千夏。その彼女の様子を見た彩は、次の瞬間、吹き出していた。


「普段、尚輝っちって呼んでるの？アイツのこと。」


「いえ、その、普段は影でみんなでそう呼んでて。面と向かっては・・・あ、この間1回だけ、つい呼んじゃいました・・・。」


恥ずかしそうに告白する千夏。


「な～んだ、そんなあだ名で呼ばれてるんなら、それなりに人気はあるんだ、アイツ。心配して損した。」


「彩さん・・・。」


そう言って表情を崩した彩は、だけどまたすぐに、その表情を引き締める。


「ごめんね、千夏ちゃん。あなたの恋心を茶化すつもりは全然ないからね。あなたが尚輝を好きになった気持ち、私にはわかる。尚輝は真っすぐで、何事にもひたむきに取り組む奴だから。あなたが彼に惹かれたのは、なんら不思議なことじゃないと思う。」


「・・・。」


「だけど、彼の中で千夏ちゃんは恋愛対象じゃないと思う。彼女がいるからっていうのはもちろんだけど、ああ見えて、結構キチンとした奴だから、生徒をそういう目で、アイツは絶対に見ないよ。」


その彩の言葉に、千夏は悲し気な表情を浮かべる。


「尚輝はあなたに対する好意をたぶん持ってる。ではそれは生徒として、そして同じ弓道を愛する者としての気持ちだと思う。」


「・・・。」


「千夏ちゃんには、辛い話だよね。そして、これから私があなたにお願いすることは、あなたにはもっと辛い話かもしれない。だけど・・・ごめん、言わせてもらう。千夏ちゃん、弓道部に戻ってあげて欲しい。」


「彩さん・・・。」


「一介のOGに過ぎない私が、こんなお節介焼くのは越権行為なのはわかってる。だけど私は去年のOB･OG会で、あなたに惚れ込んだの。だから千夏ちゃんに、どうしても弓道を続けて欲しいんだ。」


懸命に訴える彩。