Far away ~いつまでも、君を・・・~
「なぁ、葉山、勘弁してくれ。」


「しらない。失恋の恨みは恐ろしいんだから。」


女子2人の攻撃にたじたじになってるところに、スマホが鳴り出し、ビクッとして画面を見た尚輝は、慌てて電話に出る。


「もしもし。」


『ねぇ、いつまで待たせるの?夕方になっちゃうよ。』


聞こえて来たのは、明らかにおかんむりの京香の声。


「す、すまん。」


『彩さんと私、どっちが大事なの?』


「そんなこと言うなよ、事情はちゃんと話しただろ。」


『わかった、今日はもうなしだね!』


「ちょっと待てよ。とにかく急いで行くから、待っててくれ。」


恋人を懸命になだめて、電話を切った尚輝は、すがるように2人を見る。その切ない表情に彩は吹き出し


「あ~あ、尚輝っち、だらしな~い。なんか幻滅ぅ。」


千夏にまでからかわれて


「悪かったな。もうなんとでも言ってくれ。」


とうとう不貞腐れてしまった尚輝に、2人はまた笑ってしまう。


結局、これ以上は可哀想ということで、ようやく解放してくれた2人を最寄り駅まで、送り届けた尚輝は


「葉山、明後日からまた待ってるぞ。」


と後部座席に声を掛ける。


「あの、先生。」


「なんだ?」


「美奈たちのことも許してあげてくれますよね?」


不安そうに聞いて来た千夏に


「俺が許すとかの問題じゃない。アイツらが帰って来てくれるなら、全員抱きしめて、歓迎するだけだよ。」


ニヤッと笑って答える尚輝。無論冗談のつもりだったのだが


「あんたも懲りないね、そういうのが生徒を勘違いさせるんだよ。というか、セクハラ。」


真顔で彩にたしなめられ


「す、すみません・・・。」


とシュンとなる。
< 171 / 353 >

この作品をシェア

pagetop