Far away ~いつまでも、君を・・・~
「鯉沼様との最終打ち合わせ、無事完了?」


昼休みで一旦事務所に戻った彩は、優里に声を掛けられる。


「はい、お陰様で。」


笑顔で答える彩に


「ならよかった。」


と優里も笑顔。自身が初めて担当した式の新婦の従妹に当たる麻美の式のことは、優里も気に掛けているのだ。


「当日は、私もちょっと顔出させてもらうから。従姉さんもいらっしゃるんでしょ?久しぶりにお目に掛かれるのが楽しみ。」


「そうですね。」


その優里は、スペシャルの準備に追われる日々。


「お陰様で、予約も既に満席だからね。課長の鼻息も荒くなってるし、私も気合を入れていかないと。」


そう言って笑った優里は


「でさ、実は彩にお願いがあって。」


と表情を改めた。


「なんですか?」


「うん、来週の水曜のフェアなんだけど。」


年に2回のスペシャルよりは、当然規模は小さいが、ブライダルフェアは随時開催されている。土日祝日の開催がほとんどだが、数は少ないが、平日の夜にも開催されている。仕事帰りに寄れ、時間も2~3時間で済むことから、意外にニーズがあるのだ。


「私が承ったお客様がいるんだけど、実はどうしても、そのあとのシフトの関係で、その日に休みを入れなきゃならなくなっちゃったんだ。」


「スペシャルの関係ですか?」


「そうなの。それで、急遽で悪いんだけど、彩にお願いできないかと思って。」


「わかりました、大丈夫です。」


そういう事情なら仕方がない。彩は即答で引き受ける。


「ありがとう、助かる。じゃ、お客様の方には私から連絡しとくから。」


「お願いします。」


(プレイベ-トが充実してないと、こういう時に融通が効いちゃうんだよね・・・。)


内心、彩は苦笑いしていた。


そして当日。この日は遅番で出勤した彩は、夕方までにデスクワ-クに目途を付けて、予約客の来場を待つ。


(確か、お友達と2人での来場だよね。)


アウトプットした申し込みメールを改めて確認する。カップルで参加するものというイメ-ジが強いブライダルフェアだが、お一人様、あるいは友人や親と参加するお客も一定数存在する。


それじゃ冷やかしじゃない、とガッカリするなかれ。確かにその場での成約はほぼ見込めないが、しかし1人でも申し込んで来るくらいに、真剣に式場を探しているお客様がほとんどなのは、経験上、彩はよくわかっていた。
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