Far away ~いつまでも、君を・・・~
そんな下心はあったが、根は真面目な彩は、やがて弓道の魅力に取りつかれて行った。そんな彩を、斗真も主将として、気にかけ、声を掛けてくれるようになった。
「廣瀬、お前、いい筋してるぞ。俺が1年の時より、よっぽどいいぞ。」
「あ、ありがとうございます!」
そんなことを言われ、目も合わせられないまま、彩はぴょこんと頭を下げる。たったそれだけの触れ合いが、あとで飛び跳ねてしまうくらいに嬉しかった。
だがその自分の気持ちを彩は、斗真本人にはもちろん、他の誰にも漏らさなかった。斗真と由理佳の間に、入り込む隙間すらないことはわかっていたし、下手にこの想いが伝わり、斗真と気まずくなり、部活の先輩-後輩としての関係すら壊れてしまうことが、何より怖かったからだ。
だから、入部したのも斗真ではなく、由理佳に憧れてということにした。実際に入部してからは、同じ女子ということで、由理佳から学ぶことが多かったのも事実だった。
それから、瞬く間に3ヶ月が過ぎ、斗真は今日の由理佳と同じように、高校最後の試合に挑んだ。結果は個人10位、インタ-ハイは遠かったが
「全力を出し切った。悔いはない。」
と爽やかな笑顔でそう言った斗真を、彩はそっと見つめていた。
そして、主将の座を恋人由理佳に引き継いだ斗真はやがて卒業。
「廣瀬、弓道部と由理佳のこと、よろしくな。じゃあ。」
部の卒業セレモニ-で、そんな言葉とまぶしいばかりの笑顔を残して、斗真は都会の大学に進学して行った。
(終わったんだね・・・。)
それは、ずっと自分の中に秘めていた恋との決別のはずだった。もう前を向いて行こう、そう決めたはずだったのに・・・。久しぶりの斗真の姿に動揺した彩は、斗真にいいところを見せたい、斗真に恥ずかしい姿を見せたくない、そんな邪心から自分を見失ってしまった。由理佳を初めとした先輩達の足を引っ張ってしまった。悔しくて、情けなかった。
じわっとにじむ涙をぬぐった時、別のすすり泣く声が聞こえて来ることに気付いた彩は、ハッと周囲を見回すと、次の瞬間、思わず物陰に身を潜めていた。
「斗真・・・悔しいよ・・・。」
彩と同じ制服を着た女子が、恋人の胸で泣いていた。
「せめて彩が・・・あと1中してくれてたら・・・。」
(由理佳さん・・・。)
その由理佳の言葉が、彩の胸に突き刺さる。
「そんなこと言うな。廣瀬だって、全力でやったんだ。」
「わかってるよ。でも彩の力はあんなもんじゃない。だから先生も3年生を差し置いて、あの子を起用したんだよ。でもあれじゃ・・・出られなかった同級生たちが可哀想だよ・・・。」
「由理佳の気持ちはわかる。でも廣瀬を責めるなよ、それは・・・絶対に違うからな。」
「うん・・・。」
(ごめんなさい、由理佳さん。)
これ以上居たたまれなくなって、彩はそっと彼らに気付かれないように、この場を離れた。
「廣瀬、お前、いい筋してるぞ。俺が1年の時より、よっぽどいいぞ。」
「あ、ありがとうございます!」
そんなことを言われ、目も合わせられないまま、彩はぴょこんと頭を下げる。たったそれだけの触れ合いが、あとで飛び跳ねてしまうくらいに嬉しかった。
だがその自分の気持ちを彩は、斗真本人にはもちろん、他の誰にも漏らさなかった。斗真と由理佳の間に、入り込む隙間すらないことはわかっていたし、下手にこの想いが伝わり、斗真と気まずくなり、部活の先輩-後輩としての関係すら壊れてしまうことが、何より怖かったからだ。
だから、入部したのも斗真ではなく、由理佳に憧れてということにした。実際に入部してからは、同じ女子ということで、由理佳から学ぶことが多かったのも事実だった。
それから、瞬く間に3ヶ月が過ぎ、斗真は今日の由理佳と同じように、高校最後の試合に挑んだ。結果は個人10位、インタ-ハイは遠かったが
「全力を出し切った。悔いはない。」
と爽やかな笑顔でそう言った斗真を、彩はそっと見つめていた。
そして、主将の座を恋人由理佳に引き継いだ斗真はやがて卒業。
「廣瀬、弓道部と由理佳のこと、よろしくな。じゃあ。」
部の卒業セレモニ-で、そんな言葉とまぶしいばかりの笑顔を残して、斗真は都会の大学に進学して行った。
(終わったんだね・・・。)
それは、ずっと自分の中に秘めていた恋との決別のはずだった。もう前を向いて行こう、そう決めたはずだったのに・・・。久しぶりの斗真の姿に動揺した彩は、斗真にいいところを見せたい、斗真に恥ずかしい姿を見せたくない、そんな邪心から自分を見失ってしまった。由理佳を初めとした先輩達の足を引っ張ってしまった。悔しくて、情けなかった。
じわっとにじむ涙をぬぐった時、別のすすり泣く声が聞こえて来ることに気付いた彩は、ハッと周囲を見回すと、次の瞬間、思わず物陰に身を潜めていた。
「斗真・・・悔しいよ・・・。」
彩と同じ制服を着た女子が、恋人の胸で泣いていた。
「せめて彩が・・・あと1中してくれてたら・・・。」
(由理佳さん・・・。)
その由理佳の言葉が、彩の胸に突き刺さる。
「そんなこと言うな。廣瀬だって、全力でやったんだ。」
「わかってるよ。でも彩の力はあんなもんじゃない。だから先生も3年生を差し置いて、あの子を起用したんだよ。でもあれじゃ・・・出られなかった同級生たちが可哀想だよ・・・。」
「由理佳の気持ちはわかる。でも廣瀬を責めるなよ、それは・・・絶対に違うからな。」
「うん・・・。」
(ごめんなさい、由理佳さん。)
これ以上居たたまれなくなって、彩はそっと彼らに気付かれないように、この場を離れた。