Far away ~いつまでも、君を・・・~
年度変わりは、彩の身辺にも変化をもたらしていた。


前年度限りで、先輩プランナーの1人がフリーで活動する為に退職、またもう1人が系列のホテルに異動した。


更に彩がプランナーに転身した時の教育担当で、最も親しい先輩だった藤原優里が、ホテル本体に異動になり、プランナーから離れることになった。


「いやぁ、まさか今更ホテル本体に移されるとは・・・驚いた。」


優里が辞令をもらった日の夜。退勤後、彩は彼女を夕食に誘った。


彩と違い、入社以来、ブライダル部門一筋で来た優里は、戸惑いと不安を隠せなかった。


「寂しくなりますけど、仕方ないです。でも、優里さんなら大丈夫ですよ。向こうでのご活躍を心から応援してます。」


その不安を払いのけるかのように、彩は力強く言葉を掛ける。


「ありがとう、まぁとにかく決まった以上、精一杯頑張るから。」


そう答えた優里は


「でも彩も大変だね。一気に上が3人も抜けるんだから。人数は単純に減っちゃうし、補充は新入社員1人だけらしいじゃない。」


と心配顔で言う。


「はい。優里さんたちのお客様を引き継がなくてはならないですし、当然新規のお客様の対応もあります。でも、新人はしばらく戦力にならないでしょうから・・・。」


「そうだよね。私は他の2人と違って、勤務地自体は変わらないから、自分の受け持ちだったお客様のフォローは、出来る限りするつもりだけど、それでも自分の仕事もあるから、限界があるからね。」


「そうですよね・・・。」


「当面は課長にも現場に出てもらって、回すしかないと思うよ。それに、多分だけど、新入社員の教育担当は残るメンバーから考えても、彩になるんじゃないかな?」


「私もそう思います。」


「だよね。今でさえ、かなりハードなのに、彩は本当に大変だと思う。身体壊さないように気を付けなよ。」


「ありがとうございます。でも、その点は、結構自信あるんで。」


そう言って笑う彩に


「ただでさえ、彩は頑張り過ぎる子だから・・・。とにかく必要以上に、1人で背負い込んじゃダメだからね。」


心配顔の優里。


「はい、気を付けます。」


そんな先輩の心配を吹き飛ばすように、彩は笑って見せた。
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