Far away ~いつまでも、君を・・・~
GWが過ぎ、土日は相変わらずだが、とにかく平日は平常を取り戻した。独立した先輩プランナ-は、在職中に担当していた挙式が、全て終了し、正式にベイサイドシティを離れて行った。


「これでいよいよ自分の腕しか頼るものはなくなった。お客様にいかにご満足いただける挙式を提案できるか。これからは、それが全てだからね。結果、このホテルを1件でも多くご案内できれば最高だけど。とにかくみんなも頑張ってね。」


最後にそう言い残して、先輩は去って行った。


「フリ-プランナ-ですか、かっこいいですよね。」


憧れの表情で、彼女を見送る静に


「でも本当に大変だよ、フリ-は。」


と答えた彩の顔を見て


「私もいずれは、そうなれればいいと思ってます。」


静はそう言い切った。


それから静の教育が再開された。平日、土日別に一通り、業務の流れを学んだ静は、次段階として他部門での研修が始まることになっていた。


しかし、それを彩から告げられた静は、露骨に不満そうな表情を見せた。


「えっ?今更、レストランとかで研修しなきゃいけないんですか?」


「今更って・・・私たちはただ式場の案内して、プランを提案するだけが仕事じゃないんだよ。私たちの式場は、あくまでホテルに併設された施設なんだから、ホテル本体の魅力もお伝えしなきゃならないし、いくつもあるレストランのご紹介も仕事の1つ。お客様にご紹介するには、私たち自身がその魅力を知らなきゃ、しょうがないし、円滑に式を執り行うには、各セクションの仕事にも精通する必要があるの。私たちプランナ-は挙式の時は、文字通り司令塔にならなきゃならないんだから。」


静の言い草に、やや腹を立てながら、でもたしなめるように彩は言う。


「そんなこと、専門学校で習いましたし、レストランの業務とかもバイトでさんざんやりましたし、現にGWの時も、問題なくこなしました。今の私に求められてるのは、一刻も早くプランナ-として独り立ちすることだと思います。だとしたら、その研修は時間の無駄だと思います。」


抗弁してくる静に、内心驚きといら立ちを感じながらも


「静に少しでも早く独り立ちして欲しいのは、確かだけど、それはそんな簡単な話じゃないよ。それに当たり前だけど、あなたに求められるのはバイトレベルの仕事が出来ることじゃないんから。」


努めて穏やかな口調で彩は答えた。
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