Far away ~いつまでも、君を・・・~
「それと・・・。」
と言いながら、千夏は表情を改めた。
「もう1つ、お願いがある。」
これまでとは一転、ややもじもじしながら、千夏は言う。
「うん?なんだ。」
訝し気な尚輝に
「あの・・・もし私が本当にインハイ予選で優勝出来たら・・・尚輝っちにギュってして欲しい。」
顔を赤らめながら、そんなことを言い出した千夏に
「バ、バカなこと言うな。」
焦りを隠せずに、答える尚輝。
「ダメ?」
「いくら、そんな上目遣いしてもダメだ。そんなこと、出来るわけないだろ。」
激しい口調の尚輝に
「お願い。自分でも無茶な目標立ててるのはわかってる。だからこそ、力が欲しいんだよ。尚輝っちだって、インハイ予選でトップ10に入ったら、彩さんに付き合ってくれって、言ったんでしょ?」
食い下がる千夏。
「お、お前、なんでそれを・・・。」
「京香先生が教えてくれた。」
「な、なにぃ・・・。」
(あいつ・・・何考えてるんだ・・・。)
恋人の言動に、言葉を失う尚輝。
「私は尚輝っちの彼女になれないのは、もうわかってるし、もちろん優勝できなかったら、この話はなしで構わない。でももし目標を叶えられたその時には、好きな人に1度だけでいいから、高校最後の思い出にギュッしてもらいたいの。そうしたら、そのあとのインハイも大学受験もきっと頑張れる。だから・・・お願いします!」
ついには、深々と頭を下げられた尚輝は、曖昧に頷いてしまった。
(俺は教師失格だな・・・。)
喜ぶ千夏を眺めながら、自嘲気味に心の中で呟いた尚輝は、しかし現実に彼女を抱きしめることになることはないと思っていた。あの時の彩の気持ちが、今更ながらわかるようだった。
そして試合当日。千夏は個人戦も団体戦も奮闘した。団体は美奈と共にチ-ムを引っ張り、予選を突破。そして、個人では、強豪校の有力選手を抑えて、3位入賞。彩の記録を抜いて、颯天高弓道部最高記録を打ち立て、インハイ出場まで本当にあと一歩まで迫る活躍を見せた。
「先生、ありがとうございました!」
全ての試合が終わり、控室で目にいっぱいの涙をたたえて、自分の前に立った千夏を、尚輝は万感の思いを込めて抱きしめた。ただし、それは彼女だけではなく、美奈以下の他の女子部員、更には男子部員を含めた3年生1人1人に対してだった。
「よくやってくれた、ありがとう。」
今年の3年生は、自分が初めて担任を持った学年であり、共に成長して来た仲間のような思い入れもある。その気持ちからだった。
(彩先輩、これでよかったですよね。)
号泣する3年生たちを前に、尚輝はそう思っていた。
と言いながら、千夏は表情を改めた。
「もう1つ、お願いがある。」
これまでとは一転、ややもじもじしながら、千夏は言う。
「うん?なんだ。」
訝し気な尚輝に
「あの・・・もし私が本当にインハイ予選で優勝出来たら・・・尚輝っちにギュってして欲しい。」
顔を赤らめながら、そんなことを言い出した千夏に
「バ、バカなこと言うな。」
焦りを隠せずに、答える尚輝。
「ダメ?」
「いくら、そんな上目遣いしてもダメだ。そんなこと、出来るわけないだろ。」
激しい口調の尚輝に
「お願い。自分でも無茶な目標立ててるのはわかってる。だからこそ、力が欲しいんだよ。尚輝っちだって、インハイ予選でトップ10に入ったら、彩さんに付き合ってくれって、言ったんでしょ?」
食い下がる千夏。
「お、お前、なんでそれを・・・。」
「京香先生が教えてくれた。」
「な、なにぃ・・・。」
(あいつ・・・何考えてるんだ・・・。)
恋人の言動に、言葉を失う尚輝。
「私は尚輝っちの彼女になれないのは、もうわかってるし、もちろん優勝できなかったら、この話はなしで構わない。でももし目標を叶えられたその時には、好きな人に1度だけでいいから、高校最後の思い出にギュッしてもらいたいの。そうしたら、そのあとのインハイも大学受験もきっと頑張れる。だから・・・お願いします!」
ついには、深々と頭を下げられた尚輝は、曖昧に頷いてしまった。
(俺は教師失格だな・・・。)
喜ぶ千夏を眺めながら、自嘲気味に心の中で呟いた尚輝は、しかし現実に彼女を抱きしめることになることはないと思っていた。あの時の彩の気持ちが、今更ながらわかるようだった。
そして試合当日。千夏は個人戦も団体戦も奮闘した。団体は美奈と共にチ-ムを引っ張り、予選を突破。そして、個人では、強豪校の有力選手を抑えて、3位入賞。彩の記録を抜いて、颯天高弓道部最高記録を打ち立て、インハイ出場まで本当にあと一歩まで迫る活躍を見せた。
「先生、ありがとうございました!」
全ての試合が終わり、控室で目にいっぱいの涙をたたえて、自分の前に立った千夏を、尚輝は万感の思いを込めて抱きしめた。ただし、それは彼女だけではなく、美奈以下の他の女子部員、更には男子部員を含めた3年生1人1人に対してだった。
「よくやってくれた、ありがとう。」
今年の3年生は、自分が初めて担任を持った学年であり、共に成長して来た仲間のような思い入れもある。その気持ちからだった。
(彩先輩、これでよかったですよね。)
号泣する3年生たちを前に、尚輝はそう思っていた。