Far away ~いつまでも、君を・・・~
それは、あまりに衝撃的な告白だった。


確かに年明けに、由理佳から「うまく行ってない」とは聞かされてはいた。


しかし、知り合ってから、ずっと仲睦まじい2人の姿を見続けて来た彩には、一時の感情のもつれ、すれ違いによるものとしか思えなかった。


それだけに


「どういうことなんですか?」


彩は聞かずにはいられなかった。


「直接の原因は、今日、さっきの女性に俺が会うことを由理佳が知って、電話で問い詰めて来たことだ。大切なクライアントのお嬢さんだから仕方がないんだと説明しても、由理佳は納得しなかった。『斗真はいつからホストになったのよ!』あいつ、そう言いやがった。」


そう言うと、斗真は唇を噛み締めた。


「そのあと、しばらく言い争っていたんだが、とうとうあいつの方から『わかった、もういいよ、勝手にしなよ!』と言われて、一方的に電話を切られてしまった・・・。」


「・・・。」


「実はもうずっと俺たちは揉めてたんだ。そうか、廣瀬は知ってるんだよな。」


その言葉に、彩はコクリと頷く。


「俺、会社を立ち上げようと思ってるんだ。」


「えっ?」


「今の会社の仲間数人と、金融コンサルティングの会社を立ち上げて、独立するつもりで準備を進めている。瀬戸の結婚式をドタキャンせざるを得なかったのは、詳しくは言えないが、その絡みだったんだ。」


「そうだったんですか?」


思わぬ告白に、彩は驚きを隠せない。


「ただ由理佳は、反対だった。大手と言われる証券会社に勤めて、仕事も順調なのに、そんな危ない橋を渡ることないって。何度も話し合ったが、溝は深まる一方だった。」


「斗真先輩・・・。」


「廣瀬、今は女性も自分の仕事を持って、自立してる時代だが、それでも自分のパートナーには、安定を求めるものか?」


「それは、昔のように、男性に一方的に養ってもらう女性は減って来てますけど、パートナーに安定した収入がある方が安心なのは、間違いないと思います。」


率直に答える彩。


「そうか、そうだよな・・・。」


そう言って、頷いた斗真は、しかし


「だけど俺は・・・やっぱり自分の力で勝負してみたい。確かに先の保証なんか、何もない。だが、成功する自信はある。それだけのスキルは重ねて来たつもりだ。」


そう言い切った。
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