Far away ~いつまでも、君を・・・~
OB・OG会が、例年の通り、盛況のうちに終了した旨が彩の耳にも聞こえて来た一方、秋に向けて気合が入っていたスペシャルブライダルフェアは、参加者、成約とも前年比を下回る結果に終わった。


「やっぱり接客体制が、去年や今年の1月に比べたら、明らかに手薄だったよね。」


厳しい現実を前に、課長がため息交じりに呟く。当日終了後の反省会を兼ねたミーティングでのことだった。


「結果論になりますけど、受付数を絞った方が、成約増につながったかもしれません。」


そのチ-フプランナ-の言葉は、今は虚しかった。


「申し訳ありませんでした。」


重い空気の中、彩が頭を下げると


「みんなは今のベストを尽くした。その結果は、受け入れるしかないよ。」


と答えた課長は


「でも、今日は成約に結びつかなかったけど、ある程度手応えを感じたお客様は必ずいるはずだから、みんな、その辺のフォロ-はこれから怠らないようにして。」


改めて指示を出す。


「わかりました。」


それに各人が頷き、ミーティングは終了した。その帰り道、彩と静が並んで駅に向かっていると


「私、もう少しで成約まで行けたお客様がいたんです。」


静が本当に悔しそうに言い出した。


「そっか・・・それは残念だったね。で、何で成約取れなかったの?」


「お茶です。」


「お茶?」


「そのお客様、ウェルカムドリンクで日本茶を出したいっておっしゃったんです。ゲストに年配の方が多いからって。」


その静の言葉に、思わず彩は足を止めた。


「ダメなんですよね。『お茶を濁す』って言葉があって、それは誤魔化すって意味だから、結婚式では縁起が悪いって言われてて。」


「うん。」


「それをご説明したんですけど、『私たちが出したいんだから問題ないじゃない』って、ご納得いただけなくて。もし私が、じゃそうしましょうって言ったら、成約だったと思います。」


「それ正解だよ。私たちは新郎新婦のご要望に出来る限り、沿うようにするのが仕事だけど、言いなりにはなれないし、アドバイスすべきことはちゃんとしなきゃいけないんだよ。」


「はい。」


「でも静、すごいね。私、実は新人の頃、危うくそれにOK出しかけて、先輩に指摘されたことがあったんだよ。」


「はい、専門学校のロールプレイングで、そんな課題があったんです。」


そう言って笑う静の顔を見て


(この子、生意気なところはあるけど、ちゃんと勉強もしてるんだな。)


彩はまた、彼女を見直していた。
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