Far away ~いつまでも、君を・・・~
夏休みに入ると、いよいよ尚輝たち1年生も実践に入った。今まではゴムを使った練習用の弓を使っていたが、本物の弓で、実際に的に向かって矢を射る。


初めて、的前に立った時、さすがに尚輝も緊張し、また神聖な気持ちになった。力一杯弓を引き、そして射った矢は、残念ながら、的からは遠く離れた所に飛んで行ったが


(なんか気持ちいい・・・。)


なんとも言えない気持ちになっていると


「最初から当たらないの当たり前。まずは的前に立ったら、的に向かって集中する。それがスタ-トだからね。」


彩から声が飛ぶ。


「わかりました。」


そう返事をした尚輝は、でも彩の姿を真っすぐには見られない。


(かっこいい、凛々しすぎる・・・。)


だが、彩が自分からを視線を外した途端に、思わずその姿を追っていると


「バカ、ボヤっとしてるな!」


と副将の町田浩人(まちだひろと)に頭を叩かれた。


「は、はい。」


尚輝は慌てて、順番待ちに列に並ぶ。そして、午前中から夕方に掛けて、みっちりと練習。終了後は、通常練習日よりは、終わりが早いから、少し仲間達と羽を伸ばす・・・こともある。そんな日々が続く。


そしてこの日、練習は休みだったが、彩は登校していた。間近に迫った合宿の最終打ち合わせの為だった。メンバ-は彩と町田、それにもう1人の副将の遥の3人。


3泊4日で行われる合宿は、新チ-ムになってからの最初の大きなイベント。涼しい気候の中で、練習に集中するのはもちろん、寝食を共にし、お互いの交流を深め、打ち解け合うことも大切な目的であり、向こう1年の部活動を円滑にする為の重要なイベントである。


顧問の児玉も交え、4日間のスケジュ-ルを決定して行く。基本的にほぼ練習漬けになるが、3日目の夜は打ち上げパ-ティ的なイベントとしてバ-ベキュ-、更にはその後に、肝試し大会を開くことになった。


「肝試しか?俺は面白いと思うが、準備する方は大変だぞ。大丈夫か?」


と児玉は心配するが


「大丈夫です、手の込んだことをするつもりはありません。宿舎の裏の山道を一周するだけです。」


と彩は言う。


「あの辺、夜は本当に真っ暗だから。結構それだけで怖いよね。」


「ただ、盛り上がるとは思うぜ。」


と続けた遥と町田の言葉に


「そうだな。じゃ、それで行こう。ただし、事故は絶対にないように。下見はしっかりとな。」


児玉は釘を刺す。


「はい。」


その言葉に3人は頷いた。
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