Far away ~いつまでも、君を・・・~
⑱
9月に入ると、待望の人員補充があり、契約社員が1人、スタッフに加わることになった。
「結婚を機に、勤めていたホテルを退職いたしましたが、子供もだいぶ手を離れたんで、この度、契約社員として、こちらでお世話になることになりました。正直、ブランクはありますが、少しでも早く取り戻して、みなさんの足を引っ張らないようにしたいと思いますので、よろしくお願いします。」
と朝礼で挨拶した松下美由紀は、30代後半の落ち着いた雰囲気の女性だった。
「1日6時間の短時間勤務だけど、ちゃんと土日も出てもらえるし、だいぶ違うよ。」
課長が嬉しそうに語ったように、これは大きな戦力が加わったと、彩も心強かった。
暑さのピークが過ぎ、挙式数が再び増え始める時期。新規問い合わせのお客の対応は、当面担当の挙式がない静と松下に多くの比重が掛かることになった。
そんな新体制になってから、2週目の週末。午前中の打ち合わせを終え、オフィスに戻った彩の耳に、勢い込んだ静の声が、聞こえて来た。
「この日の2コマ目って、キャンセル入ったんですか?」
「うん。昨日の夜に電話掛かって来て、もう1度、日程検討したいからって。」
静の問いに、プランナ-の1人から答えがある。
「よかった。パソコン上は空いてるんですけど、念のため確認をと思って。」
「どうしたの?」
「今、私が承ってるお客様、この日程が取れるなら、是非申込みたいっておっしゃって。」
「そうなの?じゃ、ちょうどよかったじゃない。」
「はい。じゃ、早速お返事して来ます。」
嬉々としてオフィスを飛び出そうとする静を
「ちょっと待って。」
と彩が呼び止める。
「なんですか?」
「その枠、確かキャンセル待ちしているお客様がいるはずだよ。」
「えっ?」
その言葉に、驚いたように振り返る静。
「本当だ。別の枠にお申し込みで、既に予約金もいただいているお客様が、出来たらこちらの方がいいって、お待ちになってる。」
パソコンを確認した、先ほどのプランナ-が声を上げる。
「そちらのお客様にご連絡して、ご意向を確認してからじゃないと。」
彩はそう言って、静を見た。
「結婚を機に、勤めていたホテルを退職いたしましたが、子供もだいぶ手を離れたんで、この度、契約社員として、こちらでお世話になることになりました。正直、ブランクはありますが、少しでも早く取り戻して、みなさんの足を引っ張らないようにしたいと思いますので、よろしくお願いします。」
と朝礼で挨拶した松下美由紀は、30代後半の落ち着いた雰囲気の女性だった。
「1日6時間の短時間勤務だけど、ちゃんと土日も出てもらえるし、だいぶ違うよ。」
課長が嬉しそうに語ったように、これは大きな戦力が加わったと、彩も心強かった。
暑さのピークが過ぎ、挙式数が再び増え始める時期。新規問い合わせのお客の対応は、当面担当の挙式がない静と松下に多くの比重が掛かることになった。
そんな新体制になってから、2週目の週末。午前中の打ち合わせを終え、オフィスに戻った彩の耳に、勢い込んだ静の声が、聞こえて来た。
「この日の2コマ目って、キャンセル入ったんですか?」
「うん。昨日の夜に電話掛かって来て、もう1度、日程検討したいからって。」
静の問いに、プランナ-の1人から答えがある。
「よかった。パソコン上は空いてるんですけど、念のため確認をと思って。」
「どうしたの?」
「今、私が承ってるお客様、この日程が取れるなら、是非申込みたいっておっしゃって。」
「そうなの?じゃ、ちょうどよかったじゃない。」
「はい。じゃ、早速お返事して来ます。」
嬉々としてオフィスを飛び出そうとする静を
「ちょっと待って。」
と彩が呼び止める。
「なんですか?」
「その枠、確かキャンセル待ちしているお客様がいるはずだよ。」
「えっ?」
その言葉に、驚いたように振り返る静。
「本当だ。別の枠にお申し込みで、既に予約金もいただいているお客様が、出来たらこちらの方がいいって、お待ちになってる。」
パソコンを確認した、先ほどのプランナ-が声を上げる。
「そちらのお客様にご連絡して、ご意向を確認してからじゃないと。」
彩はそう言って、静を見た。