Far away ~いつまでも、君を・・・~
それから休憩をはさんで2時間ほど、2人はいろんな話をしながら、ドライブを楽しんだ。やがて、パーキングに車を滑り込ませた斗真は


「お疲れ。ここで昼飯にしよう。」


と彩に声を掛けた。頷いた彩が案内されたのは、結構しっかりした門構えの和食料理店だった。


「いい雰囲気ですね。」


彩は言ったが、内心


(ちょっと高そう・・・。)


とやや心配になっていた。


「夜はかなり敷居が高い店だけど、この時間はランチタイムだから心配するな。」


お前の心配はお見通しとばかりに、そう言った斗真は勝手知ったると言った様子で入って行く。


「先輩は前にも来られたことがあるんですか?」


「ああ、由理佳とな。アイツも美味いと喜んでくれたから、味は期待してくれ。」


彩に問いに、笑顔で答える斗真。そして実際出て来た料理は、見た目の豪華さに負けない美味しさ。結果、会計は1人3000円超えと、ランチにしてはそれなりの値段だったが、斗真があっさりと2人分のお支払い。


「先輩、あのお代を・・・。」


さすがご馳走になるわけにはと、慌てる彩に


「俺が勝手に連れて来たんだ。ここは先輩の顔を立てて、奢られてろ。」


そう言って歩き出す斗真に、すみません、ごちそうさまですと彩は頭を下げる。


再び車に乗り込み、20分ほどでこの日の目的地の水族館に到着。


「入場料は私が出します。」


真剣なまなざしで言う彩に


「じゃ、頼む。ありがとう。」


彩の性格は先刻ご承知の斗真は、そう言って微笑んだ。


平日にも関わらず、館内は多くのカップルで賑わっていた。水槽を優雅に泳ぐ魚たちを並んで見てまわり、イルカやアシカのショ-に拍手を送っているうちに、あっという間に時は流れ、閉館の音楽に送られるように、2人は館外へ出た。


「先輩、楽しかったです。ありがとうございました。」


そう言って、顔をほころばせた彩に


「俺の方こそ、ありがとうな。」


笑顔でそう答えた斗真は


「少し、歩かないか?」


と彩を誘う。


「はい。」


彩は自然に頷いていた。
< 217 / 353 >

この作品をシェア

pagetop