Far away ~いつまでも、君を・・・~
「ごめんなさい。」


「えっ?」


「いくらなんでも、それは・・・ダメです。」


「廣瀬・・・。」


「急にそんなこと、おっしゃられても・・・心も頭も付いて行けません。」


そう言って、かぶりを振る彩に斗真は言葉を失う。


「それに・・・本当に先輩は由理佳さんと別れたんですか?」


「どういう・・・意味だ?」


「私、お2人の話が食い違っているのが、ずっと気になっているんです。」


「どう食い違ってるのか、よくわからんが、とにかく由理佳とはもう全然連絡もとってないし、あいつの方からも来てないのは現実だ。」


そう答えた斗真に


「由理佳さんは私には『斗真と少し距離を置くことにした』って言ってました。だから由理佳さんから先輩に連絡がないのは、ある意味当然なんです。」


彩が言葉を返すと、斗真は息を呑んだような表情になる。


「先輩、そろそろお互いの気持ちを、もう1度キチンとぶつけ合った方がいいと思います。いえ、ぶつけ合うべきです。それがお2人の為だと思います。」


「廣瀬、俺の気持ちは・・・。」


「そのお気持ちは、今の私には受け止められません。さっきも言ったようにもあまりにも唐突で、心の準備も出来てませんでしたから。それに、私だって、先輩の夢を応援しますなんて、安易には言えません。」


「廣瀬・・・。」


「由理佳さんを、由理佳さんと過ごして来た時間をもっと大切にしてあげて下さい。お願いします。」


そう言って頭を下げた彩に、斗真は言葉を失う。


「先輩。今日は誘っていただいて、とっても嬉しかったです。デートなんて、いつ以来だろうな?ホントに楽しかったです。」


「・・・。」


「今日、先輩からいただいたエネルギ-を武器に、明日からまた頑張ります。」


そう言って、もう1度斗真に頭を下げた彩は、ゆっくりと歩き出した。


「待ってくれ、廣瀬。送って行くから・・・。」


それを見て、慌てて引き留める斗真に


「いえ、今日はここで失礼します。先輩、本当にありがとうございました。」


ニコリと微笑んで見せた彩は、そのまま歩き出して行った。
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